2020 Fiscal Year Research-status Report
出産関連自費医療の評価にむけた需要者視点のWTPと家事育児仕事の取組み
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19K01978
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Research Institution | Professional Institute of International Fashion |
Principal Investigator |
菅 万希子 国際ファッション専門職大学, 国際ファッション学部, 教授 (10612989)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 産後ニーズ / WTP / 産後ケア / 少子化 / 産後自費医療 / 医療経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、研究テーマに関連した整理し、調査結果の分析を深めた。その結果、現在行われている産後女性のケアにおいて、産後の女性のニーズがあまりみられない主な理由の1つが、産後医療の産後の女性のあり方に対する認識と、女性自身が自らもつ産後女性としてのあり方の認識が、大きく異なることを明らかにしたことが具体的な研究成果である。産後医療では、産後の女性の疾病の発見と治療が医療として行われるが、その他に産後1か月から数か月、産後の健康状態の管理を行う。その後は母子の健康管理を行うが、基本的には子を中心としている。社会的な認識では、産後の女性はまず母として子の健康管理を行い、場合によっては家庭と仕事を活動的に両立することも期待されている。しかし、実際の調査結果からは、産後1年以内の女性は家庭にとどまることを望んでおり、産後1年を過ぎたころ、仕事を始めたいと考えるようになることが明らかになった。仕事を継続することは自己実現というより、経済的な理由が多く、最も求められていたのは経済支援であった。また、出産により女性は、抜け毛や体重増加などの、医療上の不具合ではない大きな身体的ダメージを受けたと感じていた。それは産後医療のケアの範囲にはなく、社会的には産後よくみられる体調変化に過ぎないととらえられている。例えば、授乳によってバストの形状が損なわれるのは女性にとっては苦痛であるが、授乳することは母として当然であり、形状が損なわれることが苦痛であると表現することも憚られ、表現しにくい点に課題があると考えられる。つまり、産後の女性の出産後のケアへのニーズは、出産後の女性を可能なかぎり出産前の身体的な状態に近づけようとするケアであり、まず出産後の変化における苦痛を理解することが求められている。自費医療としての産後ケアの範囲の拡張が、どこまで可能であるか、明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
勤務先を異動したことによる雑務の発生や研究環境の整備に時間がかかったため、研究の進捗にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、産後女性のニーズに対応した産後ケアの社会実装と、産後自費医療の医療経営論における体系化を目指す。社会実装を推進するためには、受け入れ側の選定と調査が必要である。研究によって発掘した出産後の女性のニーズを、受け入れ先が受入れ可能であるのか、また受け入れが可能であれば、受け入れにあたって、現行と大きく異なる価格の問題や受け入れ体制、文化的背景の理解や組織内での周知などが課題となる。今後の研究では、その課題解決の方向性を見いだすため、受け入れ側へのデプスインタビュー、グループインタビュー、質問紙調査などを行う予定である。それらの調査結果の分析と産後の女性のニーズの調査結果の分析をあわせて体系化へと推進していく。
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Causes of Carryover |
本務校を異動することによる雑務が生じたことと、研究環境が変化し、研究環境の整備に時間がかかったことから、研究に遅れが生じたため、次年度使用額が生じた。今後の使用計画は、産後ケアニーズの受け入れ側に対する調査(インタビュー、質問紙)費用、必要に応じて産後の女性の追加調査費用、データ整理・分析費用などを予定している。
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