2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Management Accounting to Manage Customer Contact Points on Electronic Commerce
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19K01982
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
君島 美葵子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50645900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 顧客接点 / 電子商取引 / 情報通信技術 / 価格決定 / 収益 / アカウンタビリティ / アウトリーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,日本企業における電子商取引を対象として,「顧客接点マネジメント」へ適用可能な管理会計技法の開発,及び理論化を行うことである。そのため,本研究では,企業と顧客との関係性に重点を置き,その関係性を管理するために効果的な管理会計技法を発見することに取り組む。 2019年度の研究実施計画は,営業費会計・マーケティング管理会計研究の先行研究分析を中心に据えた。このような分析を行うにあたり,営業費会計が米国からわが国へ本格的に導入された1940年代から,情報通信環境が整備され電子商取引が活発に行われるようになった2000年代を範囲として,国内外の先行研究を収集した。その結果,営業費会計・マーケティング管理会計研究の潮流は,営業費会計・マーケティング管理会計の体系的な議論から,マーケティング活動で管理会計技法を活用することによる影響の議論へと移行したことが明らかになった。また,マーケティング活動で会計責任を果たすために利用可能な評価尺度の測定が容易になり,情報通信技術の発展をきっかけとして,会計とマーケティングとのインターフェイスがより強固になったことも指摘した。 当初の研究実施計画への記載予定は無かったが,本研究に関連したアウトリーチ活動の実施機会を得た。この活動では,本研究課題の土台となる「営業費会計・マーケティング管理会計」を軸に「価格決定」と「収益重視の会計管理」を踏まえた管理会計・原価計算教育実践を公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の当初研究計画は,日本企業における電子商取引を対象として,「顧客接点マネジメント」への管理会計技法の理論化を行うために,先行研究分析に基づく理論構築に取りかかることであった。本年度は特に,営業費会計・マーケティング管理会計研究の先行研究分析を中心に据えた。したがって,本研究の現在までの達成度は,次のような状況となった。 2019年度は,2つの側面から研究成果を発表した。1つ目の側面は,本研究のアウトリーチ活動としての中学校における管理会計・原価計算教育実践を公開した点である。この教育実践は,「価格決定」と「収益重視の会計管理」を考慮した内容となっており,「中大連携を目的とした原価計算・管理会計教育の実践」(日本会計研究学会第78回全国大会,2019年9月9日)と「中学校社会科における原価計算・管理会計領域の授業実践―附属中学校と大学の教育連携事例―」(『横浜経営研究』第42巻第2号,2019年)で研究成果を発表した。2つ目の側面は,情報通信技術の発展に伴い,マーケティング活動の業績測定が容易になったことから,アカウンタビリティを果たしやすくなった現状を解説した。この点は,「会計とマーケティングのインターフェイス」(『JADMA NEWS』第373号,2020年)で解説した。 次年度に向けては,電子商取引における顧客接点マネジメントのプランニングとコントロールを具体的に明らかにすることである。現在,企業へのインタビューを行うための調査内容を作成しており,今後はこれらの調査のまとめと検証結果を報告する予定としている。 このように,2019年度は当初研究計画の研究に加え,新たな研究視点も発見したことから,本研究は,おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,日本企業における電子商取引を対象として,「顧客接点マネジメント」への管理会計技法の理論化を行うために,営業費会計とマーケティング管理会計に関する先行研究を分析し,仮説構築に取りかかった。そこでは,顧客との関係性を構築・維持するために,管理会計情報の有用性が認識し,この一連の研究をさらに展開していく方向性を見出した。これらを踏まえた今後の研究の推進方策は,以下の通りである。 まず,電子商取引を行う日本企業を対象として,管理会計技法,及び管理会計情報の活用に関するインタビューを継続的に実施する。インタビューでは,事業が対象とする顧客の特定を主要検討事項として,広く顧客サービス機能の強化に注力する企業を選定し,顧客へのサービスとそれに対する経営資源配分とその活用,及び評価方法を調査する。すなわち,顧客接点の活用を視野に入れた電子商取引のプランニングとコントロールの関係を明らかにする。 次に,電子商取引を行う場合,取引の商材にも目を向ける必要がある。本研究では,この商材を日本企業産のものとする。一方,電子商取引の顧客は,日本国内のみならず国外にも求める。これら特定顧客のニーズに応えるための,マーケティング活動での意思決定,投資を踏まえた各種マーケティング活動の業績評価を考察する。 以上のことから,今後の研究は,2019年度から継続する理論構築研究と,インタビュー調査を通じた企業の経験に基づく事例研究を継続的に展開する。これらの研究を遂行することによって,理論構築から理論適用へと重点を円滑に移し,本研究の中間的な結論を導出できる見込みである。
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Causes of Carryover |
2019年度末に予定していた出張が取りやめとなり,その分の旅費が未使用となったため次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画は,当初申請した翌年度の計画に加え,当該年度で実施予定であった出張を翌年度中に実施する。
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Remarks |
雑誌論文,学会発表,図書に当たらない研究発表として以下の解説記事を発表した。 「会計とマーケティングのインターフェイス」 著者名:君島 美葵子,雑誌名:JADMA NEWS,巻・号:第373号,発行年:2020年,ページ:14
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