2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Management Accounting to Manage Customer Contact Points on Electronic Commerce
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19K01982
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
君島 美葵子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50645900)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 管理会計 / 業績評価 / 収益責任 / 利益責任 / 収益配分 / レベニュー・ドライバー / 販売 / バンドル |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の当初研究計画は,顧客接点マネジメントに際して実施される各種企業活動に対してどのように経営資源配分を行うか,それらの経営資源活用をどのように評価するかを課題に掲げた。本年度は,B to C取引を対象とした顧客接点のマネジメントに焦点を当て,顧客からの収益をいかにセグメントへ跡づけるかを考察した。 B to C取引では,製品販売の方法として異なった製品をバンドルして販売することが多い。バンドル販売とは,「2つ以上の単体製品を1つのパッケージで販売すること」である。昨今の販売取引では,顧客とその顧客が購入した製品・サービスとの跡付けが比較的容易になってきた。しかしながら,社内における収益管理に立脚すると,バンドル販売した製品・サービスの責任の所在は,不明瞭になりやすい。 このような問題意識から,2021年度は,2つの側面から研究成果を発表した。1つ目の側面は,バンドル製品を販売したときに生じる収益の配分方法である。収益の配分方法は,収益配分ウエイトに左右される。このウエイトの決め方は複数あることから,どのウエイトを用いるかによって,収益責任や利益責任を明らかにするための業績評価へ直接的な影響を与える。この研究実績は,「収益配分方法の課題─バンドル製品の収益に着目して─」(『横浜経営研究』第42巻第3・4号,2022年)で発表した。2つ目の側面は,製品の販売努力を可視化するための業績評価システムである。業績評価システムの要の一つは,業績評価指標の設定にある。ここで用いられる指標は,財務的・非財務的なものの両方が含まれる。これらの指標は,会計学とマーケティングの両領域での研究蓄積が見られる。この研究実績は,「社会変容を乗り越えるためのパフォーマンス・マネジメントの深化」(日本ダイレクトマーケティング学会第20回全国研究発表大会,2021年9月11日)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の研究実施計画は,日本企業を対象とした国内電子商取引(国内EC)・越境電子商取引(越境EC)の顧客接点マネジメントに対する管理会計技法の利用実態調査と考察であった。 君島(2021)の学会報告では,顧客接点マネジメントに対する,戦略実現のための管理会計システム導入,業績評価指標の活用を全社的会計管理の観点から課題を示した。ここでの顧客接点マネジメントは,顧客接点を通じて顧客と企業をいかにつなぐかを戦略目標として掲げており,対面・オンラインの両方の顧客接点を含めたマーケティング活動と捉えている。近年,マーケティング活動に対する会計責任が企業内外から問われることも多くなり,マーケティング活動の業績管理を行うための管理会計技法,管理会計システムの構築が求められている。 君島(2021)の学会報告は,実務家とのパネルディスカッションの導入としても位置づけられたことから,学会の場で企業実務における管理会計技法の利用実態に関する情報を収集することができた。その結果,顧客接点マネジメントに対して,複数の業績評価指標を設定し,全社的な管理運用をできている企業があることや,顧客接点マネジメントの中で,マネジメントコントロールが機能していることも明らかになった。 君島(2022)では,顧客接点マネジメントの効果としての収益を配分するうえでの課題を述べた。電子商取引による販売活動は,顧客と収益との関係を可視化できる一方で,収益を構成する製品への責任を明確に配分できないことがある。ここでは,収益配分基準の選定と配分プロセスの公平性に課題がある。先述の責任の所在を明らかにするためには,これらの課題を解決することが必要である。 以上のことから,2021年度は当初研究計画に沿った研究活動を実施でき,今後の研究の分析視点も新たに得られたことからおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,顧客接点マネジメントの業績評価システム,及び顧客接点マネジメントの成果としての収益配分方法に関する研究に取り組んだ。本研究課題では,商取引における取引顧客の管理を「顧客接点マネジメント」と称しているが,本年度の研究成果を受けて,顧客接点マネジメントの業績評価と会計責任を明らかにするための計算手続きという2つの方向性を示すことができた。 2021年度は,対面による聞き取り調査を行う際,調査対象企業へ業務負担をかけないために,移動を伴う調査を縮小した。次年度は本研究課題の最終年度であるが,追加的な課題解決に繋げるためにも,電子商取引を行う日本企業を対象とした聞き取り調査に取り組みたい。 2022年度は,本研究の研究期間(4年間)の研究成果を総括する。顧客接点マネジメントを対象とした管理会計研究と日本企業の実務,これらの相互発展の貢献につながる知見を提示することが今後の研究の推進方策となる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,研究活動の移動に伴う旅費の発生が無かったことが大きい。この使用額は,旅費として使用することを想定している。
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