2019 Fiscal Year Research-status Report
会計基準設定における事後的影響分析としての適用後レビューに関する国際比較制度分析
Project/Area Number |
19K01990
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
辻川 尚起 兵庫県立大学, 国際商経学部, 准教授 (50346631)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 適用後レビュー / PIR / 会計基準設定 / 会計基準の経済的影響 / FASB / IASB / 会計基準の適正手続 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,会計基準の設定過程にかかわるデュー・プロセスにおいて,近年,アメリカ,国際基準,日本などで制度化された,会計基準の影響分析のために会計基準設定主体サイドが実施している会計基準設定における適用後レビュー(Post-implementation Review)について,その制度の国際比較と影響要因の分析,すでに行われた適用後レビューの具体的な内容の再検討,追加的な実証研究などを行い,これらを複合的かつ多面的に検討することで,会計規制や会計基準設定主体のあり方に関する含意を探ることを目的としている。 そのための具体的課題として,R元年度は,課題研究目的の全般に対して,資料収集とリサーチデザインの確定を中心に取り組んだ。 また,具体的な研究進捗テーマとして,主に米国のFASB・GASBに対するFAF,国際基準の設定主体であるIASBにおける適用後レビューの制度比較とその差異をもたらす影響要因の分析に焦点を当てた。 その中でも,(1)アメリカ会計基準設定におけるPiR導入過程,(2)FAFによるPIRのルールブックである「FAFの適用後レビュープロセスの説明」の2つの論点に集中的に取り組んだ。 経過研究報告として,神戸大学会計史研究会(8/10・神戸大学)において「会計基準設定における適用後レビュー」と題する研究報告を,大阪経済大学情報社会学部・財務会計論(12/16)において「会計学の対象と財務会計の役割」と題する講演をゲストスピーカーとして行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「5.研究実績の概要」で述べた通り,R元年度は,主に米国のFASB・GASBに対するFAF,国際基準の設定主体であるIASBにおける,適用後レビューの制度比較とその差異をもたらす影響要因の分析に焦点を当てた。研究計画でそうていしていなかった資料収集と分析をすすめ,研究報告を行い,R2年度の研究成果公表を目途に研究を進めている。 具体的には,下記の2つの論点について文献資料収集と分析・考察をすすめた。 第1に,アメリカ会計基準設定におけるPiR導入過程に関する史的経過過程の研究では,2007年7月のSEC財務報告の改善に関する諮問委員会(CIFiR)の設立,2008年8月のSEC CIFiRによる最終報告書における勧告,2010年7月のFAFによるFASBおよびGASB会計基準の適用後レビューのチーム・リーダーとしてM. Schroederの指名,2010年10月のFAF評議員会のFASBおよびGASBの会計基準の適用後レビューに関する新実施プロセス発表といった経過が,その後の制度形成のマイルストーンになっていることを検討した。 第2に,FAFによるPIRのルールブックである「FAFの適用後レビュープロセスの説明」に関する研究では,2012a年版,2012b年版,2013年版,2014年版,2015年版,2016年版,2017年版と改訂されてきており,PIRのみならず,そのルールである「FAFの適用後レビュープロセスの説明」も試行錯誤の繰り返しだったことをあきらかにし,異なるPiRプロセスを経たPiRは一貫性・整合性が担保し得るかと問題点を指摘した。 また,研究会等で研究報告を行うとともに,本研究に関連する同分野テーマの研究者の学会報告に参加し質問を行い,意見交換を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,以下の予定で研究を進めていく予定である。まずR元年度に行った研究に基づく研究論文の執筆公表により,成果の取りまとめの一部としたい。また,R2年度を中心に本研究の3つの課題のうち残る,課題(2)すでに行われた適用後レビューの具体的な内容とその妥当性に関する再検討,R3年度を中心に本研究の課題(3)適用後レビュー実施例における学術研究調査を踏まえた追加的な実証研究に取り組みたい。 その際,本研究ではこれらの重要課題に対して,政策過程論,政策評価論など学際的な見地から規制や基準の設定過程や規制実施後の政策評価に関する関連研究を援用して会計規制とそのデュー・プロセスのあり方へのインプリケーションを探ることとしたい。 また,今後,実証研究の財務データベース作成の基礎データとなる,データベース作成用財務データCD-ROM・東洋経済新報社と株価CD-ROM版を購入する。会計基準の他,政策評価論,政策過程論,公共選択論,法と経済学などの文献資料購入する。さらにR2,3年度に,国内文献資料収集(国立国会図書館東京本館・東京,日本証券経済研究所証券図書館・東京,公益財団法人日本税務研究センター図書室・東京),研究集会での研究成果発表のため,日本会計研究学会,日本会計史学会,会計学サマーセミナーin九州,神戸大学会計史研究会をはじめとする研究成果発表を行いたいと考えている。 なお,周知のとおりR2年3月以降の新型コロナウイルス対応のため,関係機関の一時閉館等に伴う国内・国外での資料収集の機会や,研究集会および報告の機会が自粛により控えざるを得ない状況でいることを付言する。
|
Causes of Carryover |
理由は主に2つある。第1に,R元年度は先述の通り予定外の資料の入手ができ,その分析で研究が経過したこと,第2に,後述の通り,データベース等,より最新のものを研究期間の後期に購入する方が適時性の高い成果につながると考えたためである。 研究計画の申請の通り,今後,実証研究の財務データベース作成の基礎データとなる,データベース作成用財務データCD-ROM・東洋経済新報社と株価CD-ROM版を購入する予定である。データはより新しい年度のものを用いることがより適時性の高い分析結果が得られると考えられるため,最終年度であるR3年度に購入する予定である。また,会計基準の他,政策評価論,政策過程論,公共選択論,法と経済学などの文献資料購入する。 さらにR元年度に,国内文献資料収集に関して,本務校学内裁量区分研究費の採択を得たため,これに相当する額をR2・3年度に活用することができることとなったことも,次年度以降の使用理由と計画に含む。
|