2019 Fiscal Year Research-status Report
リース会計・環境財務会計・非営利組織会計の資産認識に着眼した財務弾力性評価の開発
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19K01992
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Research Institution | Chiba Keizai University |
Principal Investigator |
佐藤 恵 千葉経済大学, 経済学部, 准教授 (90554981)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 財務的弾力性 / リース会計 / 使用権モデル / 非営利組織会計 / 公益法人会計 / 環境財務会計 / 資産除去債務 / 財務諸表表示 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度は、主に、次の3点に関して、研究の成果を得ることができた。 1.リース会計の使用権モデルにおける「変動リース料」の取扱いに関して、G4+1時代からIFRS16公表までの約20年間の変遷を整理・検討し、その旨を学会報告した。この整理を通じて浮き彫りとなった論点として、変動リース料の再測定における「資産の簿価修正」を正当化するロジックに着目し、検討した。とくにIASBとFASBのリース会計共同プロジェクトの後期に、ロジックとして用いられた他の会計基準(IFRIC1など)との論理的整合性を検討した。 2.リース会計の使用権モデルにおける「貸手の処理」に関して、G4+1時代からIFRS16公表までの約20年間の変遷を整理し、代替的会計処理方法の比較検討を行った。その成果の一部に関しては、学術講演会にて報告した。 3.公益法人会計基準の簿記処理の論点を整理・検討し、学会(委員会)にて中間報告を行った。現行の公益法人会計基準は、他の非営利組織法人会計基準と異なり、基本金概念を廃して、正味財産の変動がフロー計算上明らかとなる点に特徴がある。それを可能とする計算書類の体系および簿記処理に言及した。とくに正味財産の部で内書き表示される基本財産等の取扱いに焦点をあてた。 なお、1および2は、リース会計では各論として扱われるが、財務的弾力性の表現を検討する上で、重要視している。次年度は、両論点について更に深掘りし、論文として刊行することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付額を有効活用するために、統計分析に替えて、ヒアリング調査および文献研究に注力することとしている(支払請求書の「本年度以降の研究実施計画」に記載済み)。 文献研究は、リース会計を中心としておおむね順調に推移している。今年度、学会等で報告の機会が得られなかった環境財務会計の分野に関しても、新たな知見を得つつあり、おおむね順調に推移していると言える。 他方、ヒアリング調査の予備的考察のために実施している年次報告書のデータ整備に遅れが生じている。 したがって、本研究課題の進捗状況は、全体として「やや遅れている」と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の推進方策について、研究手法別に簡潔に記載する。 1.文献研究 リース会計に関しては、1年度に取り上げた(変動リース料を含む)オプション取引および貸手の処理を更に深堀りして検討する。環境財務会計に関しては、資産除去債務会計に加えて、統合報告の論点に着目してその概念を中心に検討する。非営利組織会計に関しては、公益法人会計基準の歴史的変遷について整理し、他の非営利組織会計との異同点を検討する。いずれも本研究の分析視角である財務的弾力性の適正表示の観点から検討していく。 2.ヒアリング調査 予備的考察として年次報告書をデータ化・分析する。その上で、ヒアリング調査を実施し、効果を高める。今年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で、ヒアリング調査が限定的になる可能性が高い。したがって、年次報告書の分析に注力することを予定している。
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