2022 Fiscal Year Research-status Report
リース会計・環境財務会計・非営利組織会計の資産認識に着眼した財務弾力性評価の開発
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19K01992
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
佐藤 恵 国士舘大学, 政経学部, 教授 (90554981)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 財務的弾力性/財務弾力性 / リース会計 / 非営利組織会計 / サステナビリティ開示基準 / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、文献研究を中心として、以下に掲げる研究の成果を得ることができた。 (1) 共同研究として、2021年に公表された国際統合報告フレームワークの改訂版を中心に「負」(negative)の情報開示に関する研究を取りまとめ、令和4年中に共著論文を刊行した。本論文では、非財務報告開示基準のなかで「負」の情報開示に着目し、当該開示情報が企業のイノベーションを高める可能性について、組織学習論の観点から検討を行った。 (2) 個人研究として、2022年3月にISSBが公表したサステナビリティ開示基準公開草案を中心に、企業の「レジリエンス」(resilience)に関する情報開示を整理・検討した論文を刊行した。本論文では、ISSBの公開草案の他、IASBの経営者の説明(MC)およびTCFD提言において企業評価の一つとして取り上げられている「レジリエンス」に着目し、企業のレジリエンス評価が、1970年代に提唱された「財務弾力性」評価と近似するとの仮説を立て、両概念を比較検討した。そして、両概念は、企業の(実質的な)資金拘束性に関する情報開示の必要性を要請したものと言い当てている。 以上、令和4年度は、本研究課題の三本柱のひとつである「環境財務会計」の文献研究に注力した一年であった。当年度は、ISSBの公開草案の公表をはじめ、非財務報告開示基準の開発が大きく進んだこともあり、その意味において、令和4年度における研究対象の設定は妥当なものであったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、本研究課題の申請にあたり、予算を厳しく計上した関係で、当初の研究計画を(予算上特段問題のない)ヒアリング調査ならびに文献研究を中心に改めている点について、前年度に引き続き重ねて記載させていただきたい。 次に、令和2-4年度に関しては、コロナ禍によりヒアリング調査の実施が遅れた点が挙げられる。さらに、令和4年度に関しては、所属機関を移籍した関係で、研究のウエートが一時的に低下した点が挙げられる。 以上のような困難に見舞われながらも、文献研究に注力し、とくに財務環境会計分野であるサステナビリティ開示基準の研究を進展されることができた。したがって、文献研究については進捗状況に遅れはみられない。 以上より、文献研究に関しては進展がみられるものの、ヒアリング調査の実施が遅れたことから、全体として「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、研究目的の着実な達成および予算の有効活用を念頭に、申請当初から弾力的な研究計画を設計している。しかしながら、全体として「やや遅れている」ことから、当初の最終年度である令和4年度に、研究期間の1年延長を申請し、認められたところである。今後1年間は、本研究課題を総括すべく、「財務弾力性」および「レジリエンス」評価を分析視角として、本研究課題の対象となる三領域、すなわち、「リース会計」・「非営利組織会計」・「環境財務会計」を整理・考察することに邁進する。
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Causes of Carryover |
実施状況報告書の「今後の研究推進方策」でも触れたところであるが、研究目的の着実な達成と予算の有効活用を念頭に、都度、弾力的な研究計画を設計しているところである。 貴重な国庫を有効に活用すべく、慎重を期して使用してきた結果、次年度使用額が生じることとなった。このたび1年間の延長申請が認められたため、コロナ禍により遅れていたヒアリング調査費に活用する計画を立てている。また、英文論文執筆に伴う校正費に充てる計画もある。
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