2021 Fiscal Year Research-status Report
管理会計の設計・運用に関するシミュレーション解析に基づく理論的・実証的研究
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19K02002
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
近藤 隆史 京都産業大学, 経営学部, 教授 (60336146)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マネジメント・コントロール / 業績評価 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題のもとで,これまでの成果をベースにしながら,マネジメント・コントロール,特に,業績評価やその他のコントロール・システムを含み,その設計と効果について検証を行ってきた。研究代表者は,マネジメント・コントロールのシミュレーションのモデルを検討し,実装を行い,様々なパラメータに基づき多数回の試行から得られたアウトプットのデータによって,マネジメント・コントロールに関する知見を得ることもできた。第一に,いくつかのコントロール・システムが相互に作用するマネジメント・コントロールの特性や収束の可能性(また違った言い方をすれば,一般的に観察される企業ごとのマネジメント・コントロールの多様性とも解釈できるだろう)などについて明らかにできた。第二に,エージェンシー理論(契約理論)をベースにしたシミュレーションモデルの試行を通じて,従業員への短いインターバルの業績評価が望ましい行動を引き出すことを検証している。第三に,組織を構成する従業員の相互の模倣可能性が組織のミクロ的な学習だけでなくマクロレベルの学習に昇華していく現象を再現でき検証できた。こうした一連の成果を踏まえながら,いくつかのデータ上の制約はあるものの,多様なマネジメント・コントロールの行使する主体(上位層の管理者)とその行使の対象との直接的な関係が観察しやすいと考えられる業界を選び,マネジメント・コントロールの設計と効果について試行的に調査を行っている。これら成果は『メルコ管理会計研究』13(II),21-34頁(査読付き)にて掲載されている。ただし,シミュレーションでの検証結果を直接的に取り込めていない点など踏まえれば,今後への課題も残されている。この点については,モデルと実証との相互的な関係を重視しながら,課題を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の成果については,研究業績の概要にてあげたとおり研究論文があげられるものの,学会や研究会での報告,(モデル分析からの知見に基づいた)ケーススタディあるいはリサーチフィールドからの経験的データの収集などを行う予定ではあったが,いずれも実施が困難な状況が続いたため,現時点においては,研究課題の進捗はやや遅れているとも言える。ただし,一部サーベイからのデータ収集もできたことは,研究課題における成果でもあり,今後につなげていけるとも考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた研究成果をもとに,研究の推進していく方策としては,知見を整理・精査しながら,シミュレーションや理論のモデルの拡張,検証,理論的な取りまとめを行っていくことを予定している。そのため,以下いくつかを検討している。まず,シミュレーションのモデルの精緻化であり,部分的な拡張を検討している。マネジメント・コントロールの理論的な枠組みは近年も複雑・多様になっており(近年では,特にコントロール・パッケージとして異なるタイプのコントロール・システムが同時的に利用されていると仮定されることが多い),そうした状況を踏まえ既存モデルの拡張が必要と思われる。第二に,理論的な知見を明確にするためにも,これまでの関連論文の文献レビューのとりまとめが必要になる。特に,管理会計研究におけるシミュレーションを用いた研究意義を見出す上でも重要である。第三に,必要に応じて経験的なデータと突き合わせながら理論的な知見の妥当性の検証を行う必要がある。シミュレーションのモデルは,既存の分析モデルをベースに構築されることが多いため,パラメータの設定などに配慮しながら結果を慎重に検討する必要があるだろう。これらを昨今の状況を踏まえながら,最終年度に向けて,それぞれ遂行していくことを検討している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じてしまっているのは,これまでの研究の遂行を通じて研究業績として(査読付きの)論文があげられるものの,その一方で,予定していた学会や研究会での報告,モデル分析からの知見に基づいた経験的データの収集など,いずれも実施するのが難しい状況が長く続いたことが主な要因として挙げられる。次年度使用額については,今年度において,まずは,もちろん時々の状況を判断した上で,得られた成果についての研究報告のための旅費や調査費に使用する計画をしている。また,これまで拡張してきたモデルの解析のために,それら複雑な計算を効率的に処理することが可能なコンピュータの購入なども計画している。
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