2023 Fiscal Year Annual Research Report
管理会計の設計・運用に関するシミュレーション解析に基づく理論的・実証的研究
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19K02002
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
近藤 隆史 京都産業大学, 経営学部, 教授 (60336146)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 管理会計 / 業績評価 / マネジメント・コントロール / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度については,これまでの成果の発展ととりまとめについて注力してきた。特に,理会計研究においてシミュレーション技法を使いながら,プリンシパルとエージェント間での業績評価システムの設計と利用について分析を進めてきた。ベースとしたシミュレーションのモデルとしては,近藤・西居(2020)(『業績評価指標のインフォーマティブネスと管理可能性:エージェントの努力配分の動的過程のシミュレーション』)であり,新たに,プリンシパルとエージェントとのコミュニケーション(自らの努力の程度を正直に報告するかどうか)を伴う報酬契約を導入し拡張した。結果としては,第一に,合理性の仮定を緩和しても,分析的モデルからの予測された結果の再現が確認された。第二に,業績指標のインフォーマティブネスの違いにより,エージェントから提供される「高努力かつ真実報告」(HT)の頻度に差が生じることが明らかとなった(インフォーマティブネスの低下が,HTの割合を下げた)。第三に,業績評価のタイミングにより,結果に差が生じることが明らかとなった。つまり,インフォーマティブネスの高い業績指標を伴う契約のもとでは,エージェントの意思決定の更新を下げた場合,HTの割合が低下していた。逆に,インフォーマティブネスの低い業績指標を伴う契約では,HTの割合はほぼ変化がなかった。このことから,情報(シグナル)のもつ特性と,その運用のあり方との密接な関係性が示唆される。実践的には,不確実性の高い(インフォーマティブネスが低い)業績指標のもとでは,例えば,一回の試行で結果が出にくい戦略的なタスクでは,更新にはある程度の間隔をとった業績評価の運用が適しているかもしれない,ということが示唆される。こうした結果については,近藤(2023)「管理会計におけるシミュレーション研究の可能性と課題」『會計』にて取りまとめている。
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