2021 Fiscal Year Annual Research Report
コーポレートガバナンス・コードが会計情報に与えた影響に関する実証研究
Project/Area Number |
19K02004
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
岩崎 拓也 関西大学, 商学部, 教授 (30611363)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コーポレートガバナンス / コーポレートガバナンス・コード / 取締役 / 委員会 / 会計 / 財務 |
Outline of Annual Research Achievements |
コーポレートガバナンス・コードの導入を契機として,我が国における上場企業のガバナンス制度が転換期を迎えている。本研究の目的は,コーポレートガバナンス・コードが会計情報に与えた影響を実証的に明らかにすることである。研究期間の最終年度においては,過年度に得られた研究目的に関する暫定的な実証結果の頑健性を評価するとともに,追加的な分析を行った。ここで得られた結果をもとにワーキング・ペーパーを完成させ,学術雑誌への投稿を予定している。また,会社法やコーポレートガバナンス・コードの改正等を受けて,取締役会の下に委員会を設置する上場企業が増えている。この趨勢を踏まえ,取締役会の委員会に関する経済的機能について米国企業を対象として調査した実証研究をサーベイした。先行研究では,①委員会の数,②取締役会から委員会への権限移譲,および③報酬委員会と監査委員会の兼任状況に関する経済的決定要因とその影響が明らかにされている。これらの調査結果を要約すれば以下のようになる。第1に,委員会の設置は,取締役会を構成するメンバーが多くなることから生じるコーディネーション問題等を緩和し,企業業績を高める可能性がある。第2に,委員会への権限移譲,とりわけ社外取締役のみで構成される委員会に取締役会の権限を委譲することは,取締役会全体の情報共有や意思決定が損なわれる可能性がある。第3に,業績連動型報酬の設計において,監査委員会と報酬委員会を兼任する取締役は,監査委員会における追加的なコストを意識し,業績尺度として利益を採用しない傾向がある。これらの調査結果は,近年の我が国における上場企業の機関設計の変化を理解する上で有意義な示唆をもたらすものと思われる。ただし,調査対象は米国企業を対象としており,日本企業にも同様の議論を展開できるかどうかは継続的な調査が必要である。
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