2019 Fiscal Year Research-status Report
Social and Environmental Accounting for Creating Shared Value
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19K02006
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
阪 智香 関西学院大学, 商学部, 教授 (10309403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
地道 正行 関西学院大学, 商学部, 教授 (60243200)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 共有価値 / 社会環境会計 / 付加価値分配 / 租税回避 / 探索的データ解析 / 企業財務データ / 非財務情報開示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、世界規模の財務ビッグデータを用い、時空間の観点からビジュアライゼーション技法を用いたダイナミックでインタラクティブなデータ可視化を行うことで、データ自身の情報を探索的に引き出し、グローバルな企業活動の実態に関する新しい知見と課題を明らかにする。それにより、共有価値創造のための社会環境会計を形成する証拠を提示する。財務ビッグデータは、GNU parallel 等の並列処理環境を利用し、Apache Spark、PG-Strom環境とデータ解析環境Rを連動して利用することによって、処理速度(ベロシティー)を改善する。また、時間・空間の両面から探索的データ解析を実行することによって、企業行動を高精度に予測する統計モデリングと実証分析を行う。研究全体に対しての再現可能性も確保する。 なお、本研究で扱う財務データセットは、その規模が120GB 超の複数のテキストファイルであり、通常の計算機環境のメモリ容量を超える。これらは、抽出してそのまま解析することは不可能であり、データ形式の変更、文字・行末コードの変換、欠損値の置換などの前処理が必要となる。そこで、Unix系OS のコマンド(grep、sed、dos2unix 等)とデータ解析環境Rを利用して前処理を行った。この工程を、相応の処理能力を有する計算機環境を用いて、GNU parallel等の並列処理環境を利用して高速化することに取り組んだ。また、データを分析するためにデータを拠点へ転送する際や、拠点内でネットワークを介したPG-Strom等の環境下でラングリングは、GPGPU 環境と高速なネットワーク資源を利用して実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データの入手と分析等について、当初の予定どおり進展している。具体的な研究実績としては、主に次の(1)~(3)の3つである。 (1)世界の(非上場企業を含む)全企業2400万社のデータを用い、付加価値分配のうち、政府への分配(税金支払)、特に企業の租税回避に焦点を当て、世界160 カ国の全企業について、実効税率(ETR) と総資本利益率(ROA)をプロットした散布図(10 年分)を作成した。税率ゼロ(x 軸中央)に企業が集中し、全く税金を払わない企業が利益率の相当高い企業にもあり、租税回避の蓋然性が確認できた。 (2)国連の新国富(Inclusive Wealth)の指標を用い、140 カ国の国毎の企業のストック(総資産) 合計との関係(過去20 年間の推移) を示すことで、経済活動によって不可避的に生じる環境問題への対応が最重要課題のひとつであることを示した。さらに、当期純利益に対して従業員給付が多い国は、 新国富に占める人的資本の割合が高いなど、企業の労働分配率が国富(ストック) にも影響を与えている可能性等についても示した。 (3)非財務データを用いた分析として、49 カ国の企業のESG 活動を評したFTSE Russell ESG Rating (2018年度データ) とOsiris財務データを用いた分析を実施し、ESG 総合スコアと、E(環境)・S (社会)・G(ガバナンス) それぞれのスコアのいずれを用いた分析でも、スコアの高い企業の企業価値(株式時価総額) が高いことを観察した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の展望は、次に示す(1)~(3)の内容である。 (1)処理された企業財務ビッグデータを用い、時空間の観点からビジュアライゼーション技法を用いたデータ可視化を行い、引き続き、グローバルな企業活動の実態(付加価値分配と人的資本、生産性、租税回避) に関する新しい知見と課題を明らかにする。 (2)2019年度に入手した財務ビッグデータについて、GNU parallel 等の並列処理環境を利用し、さらにApache Spark、PG-Strom環境とデータ解析環境R を連動して利用することによって、可視化を行うためのデータ前処理の速度(velosity) を改善する研究を行うとともに、欠測情報などのデータの品質に関する考察も行う。また、2019年度に実験的に利用したPG-StromとGPGPUを連動させることによってデータを並列分散型で取得するフレームワークを、2020年度はApache Arrowも活用することによって、さらに高速にデータの前処理、ラングリング、解析を実行することを目指す。なお、現在、新たに抽出中のさらに規模が大きくなった2020年のデータを、2020年度の研究対象とする予定である。 (3)時間・空間の両面から探索的データ解析(Exploratory Data Analysis: EDA) を実行することによって、企業行動を高精度に予測する統計モデリングと実証分析を行うことでその有効性を検証する。なお、2020年度は企業サイズ分布(Firm SizeDistribution: FSD) や確率フロンティア分析(Stochastic Frontier Analysis: SFA) に基づく企業分布生成理論モデルに関しても検証を行う予定である。なお、研究全体に対しての再現可能性も確保する。
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Causes of Carryover |
次年度に繰越す最も大きな理由は、初年度購入予定の物品について、パーソナルコンピュータ(PC)の性能評価で最も重視されるCPUが、第9世代から第10世代に転換する時期にあったためである。具体的には、当初購入予定のMacBook Pro 16インチが第9世代CPU搭載にとどまり、第10世代CPU(Intel Core i7)搭載モデルの販売が2020年度にスライドした。本研究との関係としては、分析対象の財務データの規模が大きいため(140GB超のファイル群が複数セット存在)、CPUコアを並列化し、高速処理する必要があり、可能な限り処理能力の高いCPUの搭載が重要な条件となる。2020年度の研究費の使用計画としては、販売予定である第10世代CPU搭載のMacBook Pro 16インチを購入し、データ前処理を高速に実行する予定である。なお、MacBook Proの購入理由は、性能(CPU、ストレージ、メモリ、ネットワーク)・機動性等の点で、本研究を実行するために唯一のものであるからである。 また、2020年2月・3月に2019年度の研究成果報告の出張を、研究代表者・分担者共に複数予定しており、出張費等をこのために残しておいたが、全て延期・中止されたことにより、これを2020年度の研究成果報告に使用する予定である。
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Research Products
(18 results)