2021 Fiscal Year Research-status Report
Social and Environmental Accounting for Creating Shared Value
Project/Area Number |
19K02006
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
阪 智香 関西学院大学, 商学部, 教授 (10309403)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
地道 正行 関西学院大学, 商学部, 教授 (60243200)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 会計ビッグデータ / 探索的データ解析 / サステナビリティ開示 / ESGと企業価値 / 人的資本 / 統計モデリング / CSV / 社会・環境会計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、会計ビッグデータであるBureau van Dijkの154カ国・9万社超の上場企業の30年間・91系列のデータ(300万行、1.6GB)、および、非上場企業を含む2,600万社超の10年間・85系列の世界最大規模のデータ(2.9 億行、142GB超)を用いて、GPGPU環境で Apache Spark、PG-StormとRを連動させ、探索的データ解析(Exploratory Data Analysis)を実施している。時空間の観点からダイナミックかつインタラクティブなデータ可視化(Data Visualization)と統計モデリングを行うことで、世界の企業行動の会計的帰結を明らかにし、その証拠と課題を提示した。また、得られた知見に基づき、企業行動を高精度に予測する統計モデリングと実証分析も行った。これらの結果を社会に広く還元し、企業行動を経済社会の持続可能性(サステナビリティ)に向けて変革し、CSV(共有価値の創造)につなげるための社会・環境会計(ディスクロージャーを含む)の構築を目指すものである。 また、サステナビリティ開示の重要性が高まっていることをふまえ、2021年度は、企業価値に対するESG(環境・社会・ガバナンス)データと会計データの説明力(寄与率)の比較を実施し、グローバルでは企業価値に対する会計データの説明力は約7割、ESGの説明力は約3割であることを明らかにした。一方、日本では、会計データの説明力は約7割、ESGの説明力は約1.5割で、日本におけるサステナビリティ開示と利用のポテンシャルは高いことを示した。また、人的資本等の新しい観点からの分析を実施し、企業の従業員への分配が、国の人的資本の増加と関連があることを明らかにした。 さらに、非上場企業のデータ処理の高速化が実現できたことで、非上場企業データの財務分析と可視化が初めて可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、世界の企業会計ビッグデータ、ESG レーティングデータ、国連の新国富(Inclusive Wealth)データを用い、時空間の観点からビジュアライゼーション技法を用いたデータ可視化(data visualization)を行った。データ自身の情報を探索的に引き出し、グローバルな企業活動の実態(収益性、配当性向、安全性、付加価値分配、人的資本、生産性、租税回避、ストックとフローに関する企業間格差等) に関する新しい知見と、社会・環境会計(ディスクロージャーを含む)の観点からの課題を明らかにした。また、新国富データの人的資本等を用いた分析は、今年度初めて実施し、研究成果を論文として公表することができた。さらに、非上場企業のデータ処理の高速化が実現できたことで、様々な財務分析と可視化が初めて可能となった。 これらの研究成果に基づき、2021年度における、研究代表者と研究協力者の計2名の研究実績として、学術論文11本公表(うち、海外査読付きジャーナル1本)、国際会議発表1回実施、国内会議発表15回実施、統計数理研究所ワークショップ発表3回実施、その他研究成果の新聞掲載等の業績を残すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
非上場企業のデータ処理・ラングリングの高速化が2021年度に実現でき、分析と可視化がある程度の時間で可能となったが、さらに2022年度に利用する予定のmdx環境のもとで、スムーズに探索的データ解析を実施して、非上場企業の企業行動の会計的帰結の証拠を提示できるように、適した技術動向のリサーチを引き続き行う。 財務データの探索的データ解析による可視化については、これまでは、主に世界の企業 (上場・連結決算) に関するデータを利用した結果を提示してきたが、2022年度は、このノウハウを活用して、非上場企業の財務データを使って、収益性、安全性、付加価値分配、生産性、租税回避等に関する可視化を行うことを予定している。この試みから未知の財務データの構造が明らかになることが期待される。 また、パネルデータや企業サイズ分布等に基づく統計モデリングを実施し、企業行動に関する知見を蓄積し、経済社会のサスティナビリティに向けた社会・環境会計・ディスクロージャーのあり方の検討に活用する。なお、これらの研究においては、再現可能性を確保することにも取り組む。
|
Causes of Carryover |
・2021年度においても、国際学会、国内学会、ワークショップ等がほぼすべてオンラインまたはハイブリッド開催となったことにより、研究成果発表のための国内・国外旅費の支出をほとんど必要としなかったことにより、残額が生じた。2022年度は対面開催に戻る学会もあることから、研究成果発表のための旅費の支出が増加する予定である。 ・本研究で利用しているデータベースの提供形態が変更したこと、また、これまで使用可能であったデータベースの使用期限が終了したことに伴い、2022年度はデータ購入費用が必要となる予定である。 ・高性能高速計算機環境mdxを2022年度から利用して研究を進めるにあたり、mdxの利用に適したコンピュータ環境を関西学院大学側でも構築する必要性が生じており、計算機に関連する支出も見込まれている。
|
Research Products
(34 results)