2019 Fiscal Year Research-status Report
リスクのオンバランス化による会計・財務数値および企業行動への影響分析
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19K02007
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久保 淳司 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (70322790)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リスク / 危険 / ソレイユ型 / リュンヌ型 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,リスク情報のオンバランス化が会計・財務数値および企業行動に対して,どのような影響を及ぼすのかの解明を目的としている。 近年,企業が保有するリスクに対する株主,債権者,投資家などの利害関係者からの注目が高まっている。しかし,企業が保有するリスクの多くは,現状ではオフバランスであり,財務諸表の構成要素として位置づけられていない。これらのリスクが現在オフバランスとされているのは,財務報告の目的に適合しない,財務諸表の構成要素としての定義に該当しない,認識要件を充足しない,測定不能といった理由であるため,今日進む会計の変容に鑑みると,近い将来に多くのリスクがオンバランスされる事態も想定される。 本年度は,リスク情報のオンバランス化を正当化する根拠についての理論的検討を進めた。この結果,現行の会計基準に整合する2つの根拠が存在することが明らかにされ,本研究の独自の成果としてソレイユ型とリュンヌ型と命名した。 ソレイユ型は,1975年公表のSFAS5から始まる「古い」会計基準に採用されており,蓋然性要件と将来の見積損失額を基礎とする会計処理であり,リュンヌ型は,2001年公表のSFAS143から始まる「新しい」会計基準に採用されており,債務性要件と期待値測定を基礎とする会計処理であることを会計基準における歴史的背景などを基礎とする検討によって解明した。そして,それぞれが適用された場合の財務諸表への影響についても明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を果たす上で,第1に,リスク情報がオンバランスされた際の具体的な影響を解明する必要があった。本年度は,上記「研究実績の概要」で述べたように,現行の会計基準体系と親和的な2つの会計処理方法の具体的な内容および,それぞれが適用された場合の財務諸表への影響についても明らかにすることができた。 本年度は,本研究の第1年度であるが,2年度以降に進める研究の基盤となる研究成果を得ることができたため,当初の研究計画に照らして,「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,わが国の運輸業界を対象としてパイロットテストの実施を予定している。わが国の運輸業界を選択するのは,自然災害,テロ,事故といった比較的特定しやすい定型的なリスクを保有していること,その一方で,航空,鉄道,海運など業種ごとの比較が可能なことが理由である。今後の発展性に留意しながら実施すると共に,1つの学術的成果として学術論文・学会報告によって公表するよう心がける。
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Causes of Carryover |
年度末に開催の学会・研究会への参加を予定していたが,開催が延期されることになったため,予定していた旅費の年度内の支出ができなくなった。年度末が近かったため,他の用途への無理な充当は行わず,次年度使用額とした。参加予定だった学会・研究会は中止ではなく延期であるため,次年度使用額は,その本来の予定であった旅費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)