2019 Fiscal Year Research-status Report
管理会計技法の普及と定着化に対する影響要因の解明に関する研究
Project/Area Number |
19K02011
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
森口 毅彦 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (90293282)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 管理会計技法 / 普及/普及学 / 定着化要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,わが国企業の実務に広く普及し,継続的に利用され定着化した管理会計技法と,十分な普及がみられず継続的な利用にも至らず定着化していない技法との相違はどこにあるのかという問題意識のもと,特に新しい管理会計技法の普及ならびに継続的利用を通じた定着化に影響を与える要因を明らかにすることを目的としている。 平成31年(令和元)年度の研究においては,管理会計技法の普及/定着化に対する影響要因についての理論的枠組みを構築するため,既存の理論研究のサーベイを行い,①技法そのものがもつ技術的特徴,②組織内部の環境要因,③外的環境要因・制度的要因からなる分析枠組みを構想した。 そして,新旧の管理会計技法の導入実態と導入に対する影響要因を明らかにするため,上記枠組みにもとづき,東京証券取引所第一部上場企業を対象にしたアンケート調査(「わが国企業における管理会計手法の普及と定着化に関する質問調査」)を実施した。調査の概要は,東京証券取引所第一部上場企業2,153社を対象に,管理会計に対して中心的な関わりをもつと思われる経営企画部門や経理財務部門等の担当役員・部長の方,ならびに代表取締役の方々に令和2年3月上旬に質問票を郵送し,111通の回答を得ている(回収率5.16%)。 また,研究代表者が以前行った管理会計技法の導入実態調査に回答いただいた企業数社に対して追跡調査としてインタビュー調査を行い,管理会計技法の導入実態についてより詳細な知見を得ることができた。調査を行った企業の中には,理論ベースの管理会計技法の導入とは異なり,古くから独自の管理上の必要性に適切に応えるべく優れた実務を生み出し育み根付かせているところがあることが明らかとなった(この研究成果については,『産業経理』Vol. 80, No. 2, 2020年7月に掲載予定である)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,新しい管理会計技法の普及ならびに継続的利用を通じた定着化に影響を与える要因を明らかにすることによって,継続的に利用され定着化した管理会計技法と,継続的な利用に至らず定着化していない技法との本質的相違の解明を試みるものである。 そこで,平成31(令和元)年度の研究では,①既存の理論研究のサーベイを通して,管理会計技法の「導入」や「普及」,「定着化」に関する問題の所在,検討すべき課題を明確化し,影響要因解明の分析枠組みを構築すること,②①の分析枠組みにもとづいて,管理会計技法の普及と定着化に関する調査用質問票の具体的なストラクチャーの検討を行うとともに,アンケート調査の対象を選定し,アンケート調査を実施することを計画していた。 研究実績の概要でも述べたように,平成31(令和元)年度には,既存の理論研究のサーベイを行い,①技法そのものがもつ技術的特徴,②組織内部の環境要因,③外的環境要因・制度的要因からなる分析枠組みを構想している。そして,その分析枠組みにもとづき,また研究代表者が以前行った管理会計技法の導入実態調査との比較可能性についても考慮しながら,新旧の管理会計技法の導入実態と導入に対する影響要因を明らかにするため,東京証券取引所第一部上場企業2,153社を対象にしたアンケート調査を実施している。 また,インタビュー調査を通じて,実務における管理会計技法の導入・展開・定着化の新たなパターンの可能性を見出すことができたことは,本研究に大きなインプリケーションをもたらすものである。 以上の点から,当初の研究計画はおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,わが国企業の実務に広く普及し,継続的に利用され定着化した管理会計技法と,十分な普及がみられず継続的な利用にも至らず定着化していない技法との相違はどこにあるのかという問題意識のもと,特に新しい管理会計技法の普及ならびに継続的利用を通じた定着化に影響を与える要因を明らかにすることを目的としている。 そこで,令和2年度の研究においては,平成31(令和元)年度の研究で実施したアンケート調査について,質問票の集計を進め,その結果の分析を行い,以前行った管理会計技法の導入実態調査との比較も交え,新旧の管理会計技法の導入実態について明らかにする。また,前年度の研究で構想した3つの視点-①技法そのものがもつ技術的特徴,②組織内部の環境要因,③外的環境要因・制度的要因-からなる分析枠組みにもとづき,管理会計技法の導入と定着化に対する影響要因の分析を行う。 その結果を踏まえ,管理会計技法の普及ならびに継続的利用を通じた定着化に影響を与える要因に関する理論仮説を導出したうえで,事例調査用の調査仮説を構築する。それにもとづき詳細な事例研究を行い,調査仮説の検証を行い,その検証結果にもとづき,理論仮説を検証していく。 また,前年度に引き続き,アンケート調査への協力企業に対する追跡調査としてのインタビュー調査を通して,独自の特徴的な取り組みを行っている管理会計実務の掘り起こしについても継続的に行っていく予定である。
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