2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K02014
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
繁本 知宏 香川大学, 経済学部, 准教授 (90756842)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 信用リスク / 格付 / 財務指標 / 会計情報 / テキスト分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
補助事業期間4年目となる令和4年度は、令和3年度までに実施した理論構築を基礎とした実証研究に取り組んだ。 信用リスクと財務指標の関係に関する研究としては、信用リスク指標(例えば社債スプレッドやCDSスプレッド、格付など)と相関関係の強い財務指標(数値データ)を、統計的に洗い出すタイプの研究が主流である。代表的には倒産予測モデルや格付推計モデルの構築を目指す研究が挙げられる。そうした研究は、信用リスク指標と財務指標を直接関連付けており、信用リスクを評価する主体である投資家あるいは格付会社の評価プロセスには光を当てていない。この点、令和4年度においては、特に格付に着目し、格付会社が格付付与時に公表する格付リリースのテキスト分析、とりわけ頻出語分析を行うことによって、格付会社が格付評価において実際に利用している財務指標を抽出・分析した。 分析においては、格付リリースを格付アクション別(維持、格上げ、格下げなど)に分類し、それぞれにおいて特徴的な語を抽出した。この結果、格付リリース全体としてみれば、令和3年度に明らかにした格付評価における財務リスク評価の理論に沿った特徴語が表出している姿が浮かび上がった。しかし、格付評価で重視されているはずの有利子負債と返済原資のバランスを表す語は、理論が予測するほど多く出現していないなど、説明が難しい点も見えてくるなど、さらなる分析の必要があることも認識された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画では3年で研究を終了する予定であった。しかし、令和2年度には当初計画に含めていなかった頻出語分析の理論的基盤の解明に関する研究と論文公表を追加実施したほか、令和3~4年度では新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、学会等が開催中止あるいは規模縮小、開催方式変更などを余儀なくされ、研究成果を報告して内容をブラッシュアップする機会を逸してしまった。こうした事情から、本研究の進捗状況は当初予定と比べて遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で記述したように、本研究課題の進捗には遅れが生じている。こうした状況を踏まえ、本課題の研究期間を1年延長し、令和5年度を最終年度とすることとした。 令和5年度に行うべき研究は、まず令和4年度に行った分析の研究成果を論文として公表することである。これはほぼ完成していることから、早々に査読誌へ投稿し、順調に査読が通れば年度前半には公表できる予定である。次に、追加分析として、格付水準別の分析を進める。同時に、共起分析を行い、語レベルを超えて意味レベルでの分析も行い、年度後半には論文として公表する予定である。以上は共通のデータセットを用いることができるため、令和4年度に行った格付アクション別の頻出語分析ほど時間はかからない見通しである。さらに、それらの成果をもとに、理論と現実の乖離原因の分析や、信用力評価にとって有用な会計情報についての考察を進め、本研究課題を締め括りたい。
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Causes of Carryover |
令和4年度も新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、参加予定であった全ての学会がリモート開催となった。このため、学会参加費および出張旅費として使用する予定であった金額が次年度使用額として繰り越されることとなった。 令和5年度については、リモート開催となる学会が引き続きある一方、対面開催に復帰する学会が複数見られ始めていることから、前年度までに使用する予定であった学会参加費および出張旅費が令和5年度の支出となる見込みである。さらに、本研究課題の主たる研究方法であるテキスト分析がアカデミックの世界で幅広く用いられるようになってきたことに伴い、優れたソフトウェアが市販され始めている。そうしたソフトウェアの購入にも直接経費を充てて、研究の効率的かつ効果的な遂行を目指す予定である。
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