2020 Fiscal Year Research-status Report
ERM情報の価値関連性の分析:非財務情報研究とERM研究の統合
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19K02016
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
上野 雄史 静岡県立大学, 経営情報学部, 教授 (40405147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳瀬 典由 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (50366168)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リスク / 事業等のリスク |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度においては既存のリスク情報の整理を行った。事業等のリスク情報開示については、平成31(2019)年1月31日に公布された「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」の中で、【事業等のリスクにおける記載様式の変更点】が示されて、経営者が重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを、そのリスクが顕在化する可能性の程度や時期、その影響、対応策、経営方針・戦略等との関連性の程度も含めて記載することとなった。この適用初年度が2022年3月期であり、その情報がどのように変化しているのかについての情報を整理した。対象は東証一部上場企業である。 その結果については、現在その成果をまとめているところであるが、暫定的な結果として示すと、(1)開示に積極的な企業とそうでない企業があり、(2)特に外部向けのIR資料として積極的に活用しているケースがあり、(3)リスクマネジメントに積極的に取り組んでいる企業が必ずしもリスク情報の開示に積極的な訳ではない、ということが分かっている。まだ適用初年度ということもあり、こうした開示姿勢のばらつきについてその要因を検証するところまでに至っていない。 またコロナ禍において表面化した監査リスク対応についても事例としてまとめた。これは緊急事態宣言下であった2020年3月期決算において、決算業務、監査業務のスケジュールが滞りなく進んでいた要因について考察したものである。決算・監査業務において適時性が重視され、関係者にタイムリーな情報を提供するということを優先した企業開示姿勢が鮮明にみられた。決算・監査業務を遅らせることが企業評価のマイナス材料となりうる。また決算を確定しなければ株主への配当なども確定できない。決算を遅らせれば,企業は次年度以降の経営計画を示すことは出来ず、経営上の支障もきたす可能性がある。こうした要因が作用したと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度においてはコロナ禍の影響で予定されていた海外調査が行えなかった。また研究上制約が課せられているところが多く思うとおりに進まなかった点もある。こうした状況であるものの、定期的に共同研究者とのうちあわせを行うとともに学会での発表も行い、かつリスク関連情報のデータ整理を行った。主な成果とすれば、リスク情報は定量情報と定性情報をいかに組み合わせて評価するかが、その重要性を認識できた点にあるであろう。 コロナ禍でリスク情報が注目されている中、こうした新しい要素も取り込みつつ研究を継続していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今回整理した事業等のリスク情報のデータベースを活用し、情報開示姿勢の違いがどういった要因から生じているのかについてその要因を検証する。
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Causes of Carryover |
2020年度においてはコロナ禍ということもあり、計画通りに研究を行えなかったため。
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