2022 Fiscal Year Annual Research Report
ERM情報の価値関連性の分析:非財務情報研究とERM研究の統合
Project/Area Number |
19K02016
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
上野 雄史 静岡県立大学, 経営情報学部, 教授 (40405147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳瀬 典由 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (50366168)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リスク / ERM / 気候関連リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度(最終年度)においては、2022年度のリスク学会での企画セッション、論文誌への投稿、一般誌への投稿(掲載は2023年度)などを通じて、成果をとりまとめて、発信を行った年度であった。研究を進める中で成果としては、非財務情報の中でも、いわゆる非GAAPと言われる、自主的に開示された数値の意義と課題をまとめられたことが挙げられる。またリスク関連の情報としては、有価証券報告書におけるリスク情報の開示量は充実してきている一方で、具体的なリスク対応策に言及している日本企業は、2022年3月期時点では少ない傾向にあることも確認され、リスクマネジメント、ERM体制の整備が進んでいない可能性が確認された。つまり、現状の有価証券報告書の「事業等のリスク」の枠組みの中では、経営者の視点からみたリスクの重要性、発生可能性や時期・事業に与える影響度についての開示を促すことには繋がったものの、リスク対応策の充実には結びついていない可能性がある。 こうした課題はある一方で、リスク関連の事項としては、ESG投資の拡大、パリ協定の締結という国際的な潮流の中で、気候変動リスクという課題が浮かび上がってきた。気候関連リスクに対しては、全社的な取り組みとして、同リスクへの対応を行い、シナリオ分析し、開示することが国際的な枠組みの中で求められている。これまで、自発的に、任意で行われていた非財務情報が、気候関連リスクへの対応に端を発して、統一的、かつ強制開示の方向性へと舵を切られることになった。気候関連リスクへのリスク対応および情報開示が求められることは、既存のERM、リスクマネジメント体制にも影響を与える可能性がある。
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