2019 Fiscal Year Research-status Report
管理会計によるテンションマネジメントの組織プロセスへの影響に関する経験的研究
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19K02020
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉田 栄介 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (20330227)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | テンション / 予算厳格度 / 業績評価 / 主観性 / 環境不確実性 / 財務業績 / 実証研究 / フィールド調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,管理会計の新機能として,管理会計によるテンション・マネジメント(「張り」のマネジメント)が組織プロセスにおよぼす影響を経験的に探究することにあった。管理会計による「張り」のマネジメントとは,業績目標の設定やマネジメント・コントロールシステムの設計・運用によって,業務目標間のトレードオフや組織成員の受ける緊張状態に影響を与え,組織プロセスや組織成果へ影響をおよぼすマネジメントのことである。本研究では,組織プロセスの中でも,①ミドルマネジメントの意思決定,②従業員のモチベーション,③商品・サービスと組織プロセスにおける改善・イノベーションの3つの要素に注目する。 より具体的には,第1に,予算管理や業績評価に代表されるマネジメントコントロールを対象にテンションの観点から組織プロセスへの影響を調査し,第2に,同様に,原価企画などのコストマネジメントにおけるテンション・マネジメントの如何が組織プロセスへおよぼす影響についての実証的な解明を目的としていた。 今年度は,当初の計画通り,国内外の企業訪問調査を実施した。 加えて,第1の目的についての研究論文の査読付き国際ジャーナルへの掲載が決定した。内容としては,東証一部上場企業への郵送質問票調査に基づき,予算厳格度,業績評価の主観性,環境不確実性の相互作用が財務業績におよぼす影響を分析した。その結果,不確実性の高い環境下では,予算厳格度を低め,業績評価の主観性を高めることが,財務業績(ROA(Return on Assets)や売上高成長率)を高めるという関係を明らかにした。 第2の目的については,研究進行中であり,今年度の国際学会での研究報告を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
企業訪問調査について,訪問先とは以前から協力関係が築けており,ほぼ計画通りに進行している。 2つの研究目的のひとつめについて,計画よりも早く進行し,研究成果論文の国際ジャーナルへの掲載が決定しており,極めて順調といえる。研究目的のふたつめについて,2020年8月の国際学会報告を予定しており,計画通りに進行している。 唯一の懸念材料は,世界的に蔓延するコロナウイルス感染症の影響である。実際に,2020年4月の米国への訪問調査は中止した。国内でも訪問調査の縮小はやむを得ない状況だと思われる。それでも,訪問調査を縮小し,データ分析による実証研究の比重を上げるなど,研究目的の達成に向けて研究方法を柔軟に変更することで,計画通りに成果を挙げることに大きな不安はない。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り,手元データの分析を進め,可能な範囲で企業訪問調査を重ねる予定である。それらの調査・研究を踏まえて,執筆中の論文を加筆・修正しつつ,世界への情報発信のため,英文による海外ジャーナルでの論文掲載を目指している。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の蔓延のため,米国における企業訪問調査を延期したためである。事態が収束に向かい,渡米が可能となった時点で,訪問調査を実施する計画である。
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