2023 Fiscal Year Research-status Report
包括利益・純損益およびその他の包括利益のリサイクリングをめぐる総合的研究
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19K02025
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
山田 康裕 立教大学, 経済学部, 教授 (20335160)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Penman / 包括的な利益 / 純利益 |
Outline of Annual Research Achievements |
S. Penmanは,その著書Financial Statement Analysis and Security Valuationにおいて,財務諸表の諸要素を事業活動に関するものと金融活動に関するものとに区分して組み替えた組替財務諸表を提唱しているが,この組替財務諸表の考え方は,桜井久勝『財務諸表分析』や笠原晃恭・村宮克彦『実証会計・ファイナンス』といったわが国のテキストでも採用されている。しかも,この組替財務諸表は,斎藤静樹が主張する事業投資と金融投資とに分けて成果を捉える考え方につうじるものである。すなわち,事業投資による成果は事業活動をつうじて投資資金が回収され,その余剰が成果となる。これに対して,金融投資による成果は金融商品の売買をつうじて成果が生み出される。成果の生み出され方の違いに着目し,その違いをふまえた財務諸表分析を試みたものが組替財務諸表である。このようにPenmanの主張と斎藤の主張には共通性があるものの,異なる点もある。それは,想定される利益概念の違いである。Penmanは包括的な利益(comprehensive income;普通株主以外の利害関係者への分配を控除した利益)を想定しているのに対して,斎藤は純利益(またはリスクから解放された利益)を想定している。本年度は,主に,かかる違いが生み出される理由は何なのか,またその含意としてどのようなことがいえるのかについて考察を行った。さらには,Penmanの主張するリスクのための会計の議論と,斎藤の主張するリスクからの解放の概念との同異についても検討を行い,斎藤のリスクからの解放の概念の展開可能性について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまで研究では利益や収益に係る基準設定の過程における議論を基礎的な概念に照らして,その問題点等を明らかにしようとしてきた。ここでは,実現やクリーン・サープラスといった基礎概念が分析視覚となっていた。これに対して,Penmanの研究は財務諸表分析の観点からのものであり,そこから基礎概念を抽出するのに予想以上の時間がかかった。次年度こそは,これまでの研究をまとめたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに検討したPenmanの諸概念を用いて,国際会計基準審議会の基準設定における議論を検討し,純利益やリサイクリングの意義を明らかにするための考察を鋭意進めていく。なお,本研究によって得られた知見については,2024年度中に学外の商業誌において公表予定である。
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Causes of Carryover |
研究方法の変更により,当初の研究期間よりも大幅な延長が必要となったため,あらためて2024年度を総仕上げの年度とすべく,最終年度における資料収集等のための予算を残した。これは,主として書籍の購入に充てる予定である。
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