2019 Fiscal Year Research-status Report
Non-financial KPIs as Indicators of Future SDGs: Empirical Study by Global Data
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19K02026
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大鹿 智基 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (90329160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪 智香 関西学院大学, 商学部, 教授 (10309403)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サステナビリティ / 統合報告 / 非財務情報 / ビジュアライゼーション / 実証分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、企業の社会・環境活動実績を含む非財務情報をKPIsとして報告することを目的とした統合報告を採用する企業が増えつつある中で、統合報告書内でKPIsとして報告される非財務情報が本当にSDGsに結びついているのか、また、どのような因果関係の帰結として株価上昇を生み出しているのか、という点に関する学術的研究、特に実証分析を実施することである。 研究初年度である2019年度においては、非財務情報のうち、租税回避状況に関する情報に基づく分析をおこなった。当研究組織におけるこれまでの研究を通じ、実効税率と法定税率の差で計算される値を企業の租税回避の程度の代理変数と定義した場合に、その程度が高ければ高いほど、すなわち政府への付加価値分配が低ければ低いほど、その企業のサステナビリティと負の関連性を有している(租税回避の程度が大きいほどサステナビリティの程度が低くなる)ことが明らかになっている。そこで、まずは、この成果を公刊することを目標とした。さらに、この成果を基に、データの範囲を拡充するとともに、ビジュアライゼーションを利用した分析手法の拡張をすることで、より普遍的な状況を確認することを第2の目標とした。 研究を進めた結果、租税回避行動を観察する前提として、近年においては、そもそも世界的に法定税率を引き下げる傾向が存在することが明らかとなった。しかし、その傾向を加味してもなお、企業の実効税率の低下も観察され、世界的に租税回避活動が進んでいることが示唆された。そのうえで、企業の租税回避行動が、その企業のサステナビリティに対して、逆方向の効果をもたらしているとの実証分析結果も得られており、租税回避行動が、短期的には税引後利益を向上させるものの、利益の持続性に対してプラスの影響をもたらしているわけではないと推測され、統合報告の趣旨と合致する結果になっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者および研究分担者1名の研究組織ではあるが、2019年度中に4本の論文(日本語および英語2本ずつ)を公刊したほか、国内・海外での学会・研究会の研究報告も複数回実施している。また、次年度以降の論文公刊へ向けたデータ分析も進んでおり、順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、FTSE ESG Ratingsを用いた分析を進めている。同レーティングは、世界最大規模の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が選定するESGインデックスの一つであり、個別の評価項目に関する開示の有無を評価対象とし、さらに各項目にウェイト付けして総合レーティングを算出している。個別の評価項目に関する各種の定量的・定性的データも入手でき、カバレッジ範囲も世界各国企業となっている。このデータベースを、世界の全上場企業のデータベース(Osiris)等から抽出する財務・株価データと合わせることで、申請者のこれまでの研究を拡大・拡充し、より普遍的な分析結果を導出することを目指す。これまでに、一定程度の分析結果を得ている。 一方で、研究成果の公表という点については不確定要素が多い。すでに、2020年度前半に開催予定の学会・研究会の中止や延期が相次いでおり、今後の状況も予断を許さない。データの分析や資料の準備は進められるものの、同様の問題意識を共有する研究者間でのディスカッションの機会が限定されており、最終的な成果報告のタイミングが遅れる可能性がある。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響で、2020年2・3月に予定していた出張の一部が延期となった。また、2・3月に予定していたデータ入力(謝金利用予定)も延期されている。状況が改善次第、出張およびデータ入力を実施する予定である。
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Research Products
(13 results)