2019 Fiscal Year Research-status Report
大規模広域災害に備えるためのNPOの実績評価と今後の展望
Project/Area Number |
19K02035
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
泉 貴子 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (00790354)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ショウ ラジブ 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 教授 (30378848)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | NPO / 社会福祉協議会 / 災害対応 / 災害復興 / 災害対応調整 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、対象とする3つの災害(東日本大震災、西日本豪雨、熊本地震)の被災地を訪問し、それぞれの災害時の対応、復興支援、さらに、その後どのように彼らの役割が変化したかなどについてNPOから第一回目の聞き取り調査を行った。東日本大震災から8年が経過し、どの組織も組織運営のための財政確保が困難になっている現状が浮き彫りになった。こうした課題を解決するために、行政や民間企業との連携を図っているNPOや安全・安定・継続した活動展開のための人材確保の一環としてソーシャルビジネスを行っているNPO団体が増加傾向にある。 また、2016年の熊本地震では、災害発生後に行政・社会福祉協議会・NPOの調整を行ったNPOの役割がうまく機能していた。これまでに、こうした機能を備えたNPOはなく、前例のない新しい試みであったが、その必要性と重要な役割が明らかとなった。 2018年7月に発生した西日本豪雨は特に岡山県真備町に甚大な被害をもたらした。比較的新しく他地域から引っ越してきた住民が多く、過去の災害やハザードマップなどの情報にあまり精通していなかったことが被害の拡大要因であることが指摘されている。災害対応や復興の中では、特に女性の活躍がNPO等で目立った。自治体が運営する避難所だけではなく、NPOなどが運営する自主避難所が高齢者や身障者に行き届いたケアを行うために非常に重要な役割を果たした。上記の結果については、「Towards Mabi’s Recovery-Lessons one year on-」という報告書がCWS Japanにより出版された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度には東日本大震災、熊本地震に関するデータ収集とヒアリング実施が予定されていた。これらは計画どおり実施され、加えて、西日本豪雨についても初回のヒアリング調査を終了するなど、計画どおり、もしくはそれより前倒しで進んでいる。研究結果についても、2019年11月の仙台で開催された「世界防災フォーラム」や「防災未来フォーラム」などにおいて報告を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、仙台のみならず、気仙沼や岩手のNPOにも広げて震災以降のNPOによる活動について調査を続ける。熊本地震・西日本豪雨については、すでに活動を終了しているNPOも多いが、この二つの災害からうまれた新しいNPOの活動にも注目したいと考えている。こうした新しいNPOは、多くの団体が支援に入った際の支援活動を調整する機能をもっており、こうした新たな役割をもつNPOの活躍や、彼らがどのように国際NGOと協力しているかなどに関する調査を始める予定である。 多くのNPOが活動継続のための財政確保に苦慮していることから、今後いかに安定した予算を確保しつつ、活動を継続できるかが鍵となる。そのためには、新たに行政、企業、国際NGOなどとの連携・協力が重要であると考えられるため、その可能性などについて調査をすすめたい。さらにこうしたNPOの活動を相対的に評価するための手法を確立するために、これまでの文献整理や評価項目の作成などにも着手する予定である。
|
Causes of Carryover |
2020年の1-3月に予定していた現地調査や打ち合わせを新型コロナウィルス感染拡大の影響により控えたため、経常していた旅費を次年度に使用することとなった。
|