2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K02036
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
五十嵐 泰正 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80451673)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 民泊 / オーバーツーリズム / ビルオーナー / 地権者 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、台東区において民泊に係る意識調査をインターネット委託調査にて行う予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大により民泊やその地域でのトラブルをめぐる状況が大きく変わったことを受け、パンデミック後の民泊を含む観光と居住に関する区民の意識全般に内容を広げた調査を行った。その結果、台東区内在住の回答者の多数派は、コロナ禍で「住宅地の民泊への宿泊客の出入り」および「仲見世・アメ横などの繁華街の人出」が減ったことを歓迎しながらも、コロナ禍後の観光客の回復・増加を望んでいることが明らかになった。そうした一見矛盾した意識を有する多数派層は、地域意識や参加意識が高く、観光推進そのものは支持しており、特定地区に負荷がかかるオーバーツーリズム意識や、民泊の増加による地域の不透明性の増大などの懸念が、観光全般への肯定的な評価と併存して高まっていることが示唆された。この内容は地域社会学会のシンポジウムで報告し、さらにそれを発展させた論考を2021年5月に同学会年報に掲載予定である。 一方、上野のメイン通りである中央通りに面したビルの地権者・物件所有者およびその推移について、登記情報提供サービスを利用した悉皆調査を行った。これは、ビルオーナーを対象とした聞き取り調査の準備段階の作業であるが、たび重なる緊急事態宣言発令の中で都内に赴いての聞き取り調査は困難であり、2020年度中には実現していない。 ただ、もともと関係を形成している上野地区のビルオーナーやテナントの方とは、オンラインでの接触を続けており、その一環として参加した「ひじりばし博覧会」のラウンドテーブルにおいては、上野2丁目の歓楽街における感染症対策について、ビルオーナーとテナントの協力関係の構築等について、当事者と活発な意見交換を行った。 また、本研究課題以前から取り組んでいる上野における調査を博士論文としてまとめ、学位を授与された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」欄にも記した通り、2020年度の研究進捗状況は、新型コロナウイルス感染症の流行状況によって大きく影響を受けた。 民泊に係る台東区在住者を対象とした調査において、コロナ禍を受けた観光全般への意識調査にフォーカスを拡大し、コロナ禍でなお民泊への宿泊客の出入り減少を回答者の多数が望んでいることなど、オーバーツーリズム意識を明確に析出できたことは大きな成果であった一方で、緊急事態宣言下等での移動を伴う現地調査には大きな支障が生じたためである。 なかでも、2020年度には、民泊の過剰が深刻な問題になったことをはじめとした都市課題に対処するために、先進的な規制策を打ち出しているスペイン・バルセロナへの視察・調査を、重要な参照点として予定していたが、中止を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
上野地区におけるビルオーナーの調査については、自身が事務局アドバイザーを務める上野まちづくり協議会と引き続き緊密に連携しながら、感染症流行状況を見きわめつつ、オンラインインタビューも適宜活用しながら、加速させていきたい。 研究計画策定時に大きな参照点として位置付けていたバルセロナにおける海外調査は、2021年度も困難であるのみならず、パンデミックを経て、関連する情勢が計画策定時とは大きく変容している可能性も高く、実現はできないものと考えている。代わって、北九州市の北九州家守舎など、地権者・物件オーナーを巻き込みながらユニークなアプローチでリノベーションを進めている国内事例への調査を、緊急事態宣言発令などに伴う政府や自治体の要請を慎重に判断しつつ、上野地区の研究の参照点として進めていきたい。
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Causes of Carryover |
研究計画策定時に大きな参照点として位置付けていたバルセロナにおける海外調査に、2020年度は35万円程度の旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行に鑑みて断念せざるを得なかった。また、国内学会報告のために計上していた旅費も、2020年度はオンライン開催となったため執行しないこととなった。 研究計画策定時に大きな参照点として位置付けていたバルセロナにおける海外調査は、2021年度も困難であるのみならず、パンデミックを経て、関連する情勢が計画策定時とは大きく変容している可能性も高く、実現はできないものと考えている。代わって、北九州市の北九州家守舎など、地権者・物件オーナーを巻き込みながらユニークなアプローチでリノベーションを進めている国内事例への調査のために、旅費を使用する予定である。
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