2019 Fiscal Year Research-status Report
ポスト特別措置法時代における被差別部落出身者のアイデンティティ形成に関する研究
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19K02048
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
内田 龍史 関西大学, 社会学部, 教授 (60515394)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 部落問題 / 部落差別 / アイデンティティ / マイノリティ / 生活史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、同和問題解決のための特別対策としての特別措置法が2002年に期限切れを迎え、「部落民」としての肯定的な社会的アイデンティティを形成するための制度的な支えが縮小・解体傾向にあるなかで、それでもなお肯定的なアイデンティティが形成されていく過程を、被差別部落出身の若者への生活史聞き取り調査を実施することで明らかにし、それを可能にする要因群を析出することを目的としている。「日本社会」における典型的なマイノリティである「部落民」を事例とした本研究は、現代社会を構成する多様なマイノリティの人びとが、肯定的な社会的アイデンティティを形成していくための戦略や社会運動、さらにはマイノリティ政策のあり方について、大きな示唆を与えると考えられる。 本年度は、被差別部落出身の若者を対象とした生活史インタビューを、6名に対して実施することができた。そのうちわけは、大阪府内の若者が3名、鳥取県の若者が2名、新潟県の若者が1名である。いずれも生まれ育った地域、家庭環境、部落解放運動とのつながり、学校教育の状況、進路達成状況、部落出身者としての自覚とカミングアウト、部落差別解消に向けての今後の展望などを聞き取ることができた。なお、鳥取・新潟の若者については、「特集 部落問題と向きあう若者たち」『部落解放』(解放出版社、2020)として、その記録の概要を掲載することができた。 今後も継続して全国各地の部落の若者を対象とした生活史インタビュー調査を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者として実施していた科研費研究「現代日本社会における新しいレイシズムの実態把握──部落差別問題を事例として」(基盤研究(C)、課題番号16K04092、内田龍史研究代表者)が、調査の都合上、当初予定期間(2016~2018年度)に研究を終えることができなかったので、1年間延長した。そのことによって、本研究の開始が遅れることとなったため、当初予定していたよりも調査実施が遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に実施したインタビュー調査については、文字おこし作業がほとんどおこなえていないため、文字おこしを進めるとともにデータの整理を行い、今後の分析に活かす予定である。 また、本年度は研究開始が遅れたために、次年度は本年度の遅れを取りもどすべく、全国各地の被差別部落の若者を対象に、可能な限り生活史インタビュー調査を実施し、データ収集につとめる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、研究開始時期が遅れたために、予定していたよりも生活史インタビュー調査が実施できなかった。また、実施したインタビュー調査についても、文字おこしが行えていないなどして、予算を消化できなかった。次年度はその遅れを取りもどすべく、可能な限り生活史インタビュー調査を実施する予定である。
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