2019 Fiscal Year Research-status Report
地域社会における歴史意識の現状と今日的課題―「郷土史」の危機と重層性の研究―
Project/Area Number |
19K02049
|
Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
高田 知和 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (70236230)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 歴史意識 / 郷土史 / 地域史誌 / 重層性 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、「現在までの進捗状況」欄でも書くように調査に出掛けることが非常に少なかった。それのために地域史誌や郷土史の現場に出ての調査が出来なかったこともあり、次の二つの事項を主に行なった。 一つはこれまで集めてきていた資料や本、近場の図書館で集めることが出来る情報を収集したことである。東京都内在住のため、東京都周辺の種々の図書館や文書館で各地の資料を集めることに努めた。 もう一つは、数少ない機会を利用して地域史誌や郷土史の収集に努めたことである。その一つとして、これまで未見であった島根県立図書館で島根県内の資料を集めたことが挙げられる。すなわち、同県内でこれまで出されてきて、県立図書館に所蔵されている分の地域史誌を集め、その検討を行なった。申請者はこれまでの経験で、一般に地域史誌の発行は地域によって偏りがあると考えており、同県はどちらかといえば地域史誌の発行は少ない地方ではないかと思っていたが、意外に多くの地域史誌を集めることが出来た。またそれとともに、継続的に見てきた京阪地域の資料も検討した。 同時に、今年度は調査行がなかなか難しかったこともあり、歴史意識という点についての検討を行なってきた。その際、地域の将来を担っていく子どもたちの教育現場である小中学校がどのように地域の歴史に関わっているかという観点から、主に埼玉県深谷市の事例を取り上げた。同市では実業家渋沢栄一の出身地ということもあり、学校教育の場に渋沢のことが積極的に取り上げられているからである。それの検討を行ない、地域社会のなかでの歴史意識の醸成について検討した。こうしたことは、近年他の地域でもしばしば見られるものであるため、次年度以降は地域社会の歴史意識という点で教育・学校という視点も入れていく必要が認められたと思う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
予定していた調査にほとんど行けなかったことが、最大の理由である。 一つは、秋から冬にかけて申請者の体調が今一つで、前年度に入院の前歴があるため、からだに無理をかけないで慎重を期した結果として、調査行のほとんどをキャンセルしてしまった。 さらに、体調が戻ってきた2月3月に集中的に調査に出る予定でいたところ、今度は新型コロナウィルス感染症の流行のために社会移動を自重した結果として、調査行の悉くをキャンセルせざるを得なかったためである。また、無理に出かけたとしても調査先での図書館が閉館になっていたり、対面してのヒアリングを遠慮しなくてはならない事態に陥っていたために、キャンセルすることとなった。 とにかく一刻も早い新型コロナウィルス感染症の終息を願うばかりであり、調査に出掛けて図書館や文書館での資料収集、そして対面してのヒアリングが出来るようになることを切に願うばかりである。
|
Strategy for Future Research Activity |
本稿を書いている時点では新型コロナウィルス感染症が猛威を奮っていて「緊急事態宣言」が出ている状態である。そのため、これの一刻もはやい終息を願うばかりであり、終息して移動の自由が心置きなく出来ることになれば、前年度において出来なかった調査行を積極的に行なって研究の遅れを取り戻していきたい。 ―4月に本稿を書き出した当初はこのように書いていたものの、その後6月に至った現時点では「緊急事態宣言」は解除されてある程度の移動の自由が認められるようになった。 しかし、今冬以降に改めてこの感染症が猖獗を極めて移動の自由が制限されて調査行がこれまで以上に難しくなることも当然考えられる。その場合には、これまで集めてきた資料を整理して、今後の地域史誌・郷土史についての論考をまとめていくことを課題として考えたい。 また、このような事態のなかでは、郷土史のあり方も変わらざるを得ないと思われる。現在の郷土史団体の担い手は高齢者が多く、また個々に研究するというよりも皆で集まって勉強会を開いたり当該地域や史跡を訪れるなどの行事が盛んに行なわれている。それがまた、郷土史に集まる人たちの紐帯の強さの要因になっているとも考えられる。しかし新型コロナ感染症の流行を前提に考えるとそうした会合を持つこと自体が難しくなっていく。そのため、それぞれの郷土史団体で具体的な対応を迫られることになると思われる。 本研究においては、調査行が出来ないという不利な面があるにせよ、これによって思ってもみなかった新しい研究の視点を必要とされたこととなり、今後の研究の推進方策としては、それぞれの郷土史団体がどのような対応策を考えているかということも視野に入れて進めていくつもりである。
|
Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」欄でも書いたように、調査行を幾度も幾度もキャンセルして実際の調査に行くことが出来なかったことが最大の理由である。特に主要な研究地に考えていた松山市と高知市は合計で5回キャンセルした結果一度も行くことができず、また長野県上伊那・下伊那地方にも同様の理由で行くことが出来なかった。 キャンセルの理由は申請者の体調不安と新型コロナウィルス感染症の流行によるものであったので、後者はともかく前者においては自身の体調に注意を払いつつ、後者の終息を待って調査に出掛けていきたいと計画を立てている。
|
Research Products
(1 results)