2019 Fiscal Year Research-status Report
フランス共和国における「ジプシー」の市民権に関する研究:リベラル・モデルの例外化
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19K02051
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
中野 裕二 駒澤大学, 法学部, 教授 (10253387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
左地 亮子 (野呂) 東洋大学, 社会学部, 准教授 (50771416)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フランス / 共和国 / シティズンシップ / ジプシー / ノマド / 人体測定手帳 / 適合住宅 / 市民権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀初頭からリベラルな市民権に立脚する法制度の整備と並行して、そのモデルから「ジプシー」を例外化する4つの法制度を制定してきたフランスにリベラル・ナショナリズムの原型を見て、「ジプシー」例外化の正当化の理由とこの法制度がフランス社会で受け入れられていった過程を明らかにする。検討項目は、4つの法制度を素材として、A.立法過程の検討による「ジプシー」例外化の理由の解明、B.制度面・運用面での「ジプシー」の権利制限の実態解明、C.聞き取り調査等による法制度の解釈・実行・受容の実態解明である。 具体的には、次のようなリサーチクエスチョンを設定し、それに答えていく。A.リベラルな市民権モデルに立つフランスで、「ジプシー」を例外的に扱う法制度がなぜ、どのような理由で正当化されたのか。また、約1世紀で4度制定された法制度において、例外化の理由はどのように変化したか、しなかったか。B.「ジプシー」をめぐる法制度とその運用において、フランス国籍を有する「ジプシー」の権利はどのように制限されたか。C.「ジプシー」をめぐる法制度が、実行・実践の現場でどのように解釈され、実行され、受容されてきたか。 本研究は、A.~C.答えることで、リベラルな市民権モデルへの収斂の中の排外主義の興隆と定着の理由を明らかにするとともに、市民権回復の可能性と課題を提示することを目的とする。 2019年度は、検討項目Aを中心に実施した。2019年5月、9月、2020年2月にフランスにて現地調査を実施することにより、1912年法の立法過程に関する古文書資料と関連文献、「ジプシー」の身分管理政策(人体測定手帳)に関わる古文書資料、および、現行の居住政策の展開に関わる民族誌的データを収集することができた。こうした古文書資料は日本で入手することが困難であり、一次資料をそろえ研究の基盤とすること自体に意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究計画の初年度として予定していた4つの法律の立法過程の審議記録について概ね入手することができた。しかし、1912年法の立法過程の古文書資料の入手に手間取ったため、完全にそろえることができなかった点で若干の遅れが見られると言える。民族誌的データの入手についての遅れはない。全体としては概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年5月の段階で、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、フランスへの調査研究旅行が不可能な状況となっている。2020年度前半は、2019年度に入手した古文書資料の検討を中心に行うとともに、インターネットで入手可能な検討項目AとBに関連する資料の収集に努めることとする。 2020年度後半は、調査研究旅行の可能性の有無や安全性を見極めた上で、可能であれば現地に赴き、検討項目Cを進めることとする。
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Causes of Carryover |
1912年法の立法過程の古文書資料の入手方法の確定に手間取り、1969年立法過程の古文書資料入手のための調査研究旅行がかなわず、国外出張が予定より一回少なかったためである。 2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響を見極めた上で、2020年度後期に調査旅行を集中して行い研究費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)