2020 Fiscal Year Research-status Report
「ポスト難民期」における難民の移住過程に関する研究:滞日ビルマ系難民の事例から
Project/Area Number |
19K02054
|
Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
人見 泰弘 武蔵大学, 社会学部, 准教授 (10584352)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ポスト難民期 / ビルマ系難民 / トランスナショナリズム / 民政移管 / ディアスポラ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和二年度は、研究計画二年目として以下の研究を進めた。1つ目に、難民帰国者のアイデンティティをめぐる研究である。難民が本国に帰国するなかで移住者自身と非移住者との社会文化的差異を読み取る事象が見出された。そこで移住者と非移住者に関する差異や社会的境界構築に着目し、越境者アイデンティティに関する研究を進めた。2つ目に、ビルマ政府のディアスポラ政策をめぐる研究である。民政移管後、ビルマ政府は在外国民に対する政策・制度を通じ、在外国民の人的資源を活用する方針を強めている。そのなかで2020年国政選挙では前回時よりも大規模に在外投票が実施されるなど、在外国民に対する政策的処遇に変化が見られた。そこでビルマ政府によるディアスポラ政策の実態把握を目指し、ディアスポラ政策に関連する資料収集や調査データの検討を通じて研究を進めた。3つ目に、日本国内における難民研究の動向整理である。国内で実施された難民研究のレビューを通じ、今後の研究課題として難民が保持する越境的ネットワーク、ポスト難民期を含む難民・移民の境界性のゆらぎ、離脱と追放の比較社会学の諸論点を提示し、本研究課題の理論的意義付けを強化する機会を得た。 一方で2020年春先からの感染症拡大によりフィールド調査では様々な制約に直面することとなり、とくにビルマでの現地調査の実施は適わなかった。そうした状況のなか年度末の2月にビルマで軍事クーデターが発生し、「ポスト難民期」の政治社会条件が大きく揺らぐ事態が生じた。「ポスト難民期」の可逆性や脆弱性を問うべき状況と捉え、次年度以降にこれらの観点を「ポスト難民期」の理論・実証研究に組み込みながら、本研究課題を遂行することとした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、感染症拡大防止を目的としたビルマへの入国禁止が続いたために、ビルマでの現地調査の実施が適わなかった。国内調査についても緊急事態宣言の発出もありフィールド調査の機会が限られ、遠隔ツールによる調査や文献サーベイに重心を置いて実施しつつも全体としてはやや研究計画に遅れが生じている。次年度は遠隔ツールなどをより活用しながら引き続き研究を遂行していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在取り組んでいる課題について論文化する作業を進めている。加えて今般のビルマにおける政治社会変動が滞日ビルマ系難民コミュニティに与える影響をフィールド調査等から明らかにし、「ポスト難民期」の可逆性や脆弱性によって滞日ビルマ系難民の移住過程が今後いかに再編されることになるのか。「ポスト難民期」における難民の移住過程に関する理論的及び実証的研究を進めていく。
|
Causes of Carryover |
感染症拡大によってビルマでの現地調査が実施できなかったことから、次年度使用額が生じた。2021年度以降の現地調査、あるいは現地調査が実施困難な場合は資料購入費の一部として使用する計画である。
|