2021 Fiscal Year Research-status Report
「ポスト難民期」における難民の移住過程に関する研究:滞日ビルマ系難民の事例から
Project/Area Number |
19K02054
|
Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
人見 泰弘 武蔵大学, 社会学部, 准教授 (10584352)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ポスト難民期 / ビルマ系難民 / トランスナショナリズム / 民政移管 / ディアスポラ / 出移民政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和三年度、研究計画の三年目として、以下の研究を進めた。1つ目は、ミクロレベルの観点から、帰国経験に伴い生じる難民の越境者アイデンティティをめぐる論考である。受入国日本での滞在経験を持つ滞日難民が祖国ビルマに帰国することで現地の非移住者との社会文化的差異を意識し、両者の間で社会文化的境界が形成されることを調査データなどに依拠して論じ、研究書籍の分担執筆を通じて公表した。2つ目は、マクロレベルの観点から、出身国ビルマからの出移民の国際的動向及び同国政府が実施してきた出移民政策の検証である。「ポスト難民期」と位置付ける民政移管後には、在外同胞の祖国の経済的貢献への高い期待が生じる一方、政治的影響力の行使には慎重な制度設計がみられたことなどを11月に韓国及びオンラインにて開催された東アジア社会学会(EASA)第2回大会にて報告した。現在報告内容をベースに論文としてまとめる作業を続けている。3つ目は、2021年2月に生じた軍事クーデター後のビルマ国内外の現状と、これに対する滞日ビルマ系コミュニティによる抗議行動を含む越境的実践に着目した論考を研究論文として公表した。「ポスト難民期」の移住環境を再編する政治社会的変動の影響を分析し、今後の「ポスト難民期」の理論的検討を進める作業ともなった。このほか感染症拡大のなかでの滞日ビルマ系コミュニティの状況に関する報告等を行い、研究成果を社会に還元する取り組みを進めた。 しかしながら、前年度に続いて感染症が収束せず、かつクーデターの影響から本年度もビルマ国内での現地調査は実施できなかったために研究期間を延長することとなった。引き続き、現地の感染症及び政治状況の推移を見守りながら調査研究を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、ビルマでの感染症の拡大と2021年2月に生じた軍事クーデターの影響から現地への入国禁止が続いたため、前年度に引き続きビルマでの現地調査は実施がかなわなかった。国内調査に関しても緊急事態宣言の発出による調査研究活動への制約が生じたために研究計画に遅れが避けられず、研究計画を1年間延長することとなった。本年度も現地の感染症および政治情勢の推移を見守りつつ、遠隔ツールなどを併用して引き続き調査研究を遂行していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは前年度に取り組んできた研究成果を論文としてまとめる。加えて、今回の軍事クーデターの状況から「ポスト難民期」という移住環境の脆弱性をふまえて理論化する作業を進めていく。今後は感染症の影響が長引いていることをふまえ、感染症拡大がビルマ系コミュニティに与える影響なども考察を加えていきたい。調査研究においては充分な感染症対策を取りながら、日本及びヤンゴンでの現地調査を計画し、実証的な研究を進める。
|
Causes of Carryover |
感染症の拡大とビルマにおける軍事クーデターの発生により、現地調査が実施できなかったことから次年度使用額が発生した。2022年度以降の現地調査、あるいは現地調査が実施困難な場合は資料購入費の一部として使用する計画である。
|
Remarks |
人見泰弘、2022年「No.165 在日外国人コミュニティのCOVID-19 感染拡大に備えるための情報ネットワーク調査(7)『移民コミュニティの多様性を理解する ――在日ミャンマー(ビルマ)系コミュニティを事例として』」『アジ研ポリシー・ブリーフ』アジア経済研究所
|