2022 Fiscal Year Annual Research Report
「ポスト難民期」における難民の移住過程に関する研究:滞日ビルマ系難民の事例から
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19K02054
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
人見 泰弘 武蔵大学, 社会学部, 准教授 (10584352)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 難民 / ビルマ(ミャンマー) / トランスナショナリズム / ディアスポラ / ポスト難民期 / 出移民政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度として、まずビルマの出移民政策を考察し、海外同胞の経済的貢献に期待しつつ国内政治に与える海外同胞の政治力に慎重な制度枠組みが形成されたことを研究論文を通じて公表した。2つ目に国際移動と社会統合に関する理論的検討を行った。難民という観点から労働移民とは質的に異なる移住者像を打ち立て、国際移民の越境移動と社会統合理論の拡充に向けて国際社会学・移民研究の課題を整理する研究を進めた。 研究成果を整理すると、ミクロレベルでは出身国非移住者とビルマ系難民帰国者の間で観察される差異化に着目し、越境移動に伴い生じる社会的境界を明らかにした。メゾレベルでは難民の家族戦略を考察し、日緬両国で広まるビルマ系の移住戦略の展開を明らかにした。マクロレベルでは出身国ビルマの出移民政策を分析し、海外同胞に対する経済的貢献への期待と政治的影響力に対する警戒の所在を明らかにした。並行して難民研究から捉える越境移動や社会統合の理論構築を進めた。 研究期間を通じ、1つに難民の祖国に帰国可能となった「ポスト難民期」において、受入国日本と出身国ビルマで生じる越境移動の多面的帰結が明らかになった。帰国者アイデンティティ、難民家族の移住戦略、出移民政策及び移民受入政策の制度構造などミクロ水準からマクロ水準に至るまで越境移動の重層的展開が明らかになるとともに、越境移動に伴う境界形成及び分断や格差といった今後深めるべき諸点を把握することもできた。2つ目に軍事クーデターを契機に「ポスト難民期」の脆弱性も明るみとなり、変動性を射程に入れつつ難民の移住過程を解明する分析視点の着想が得られた。祖国帰国の道が広まり始めた「ポスト難民期」から再度帰国が困難となる「再難民期」に至る連続性及び矛盾を解明する本研究事業をさらに発展させた研究を進め、引き続き難民の移住過程に関する研究を展開していく。
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Remarks |
人見泰弘、2022年、VEC(Villa Education Center)主催「在外ビルマ(ミャンマー)系コミュニティの推移と展開―出身国の動向に着目して」『2022年度 第1回VECセミナー「学びあいから始める多文化共生」』(2022年6月25日)
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