2021 Fiscal Year Research-status Report
シカゴ学派社会学における観察する/観察される女性:女性によるモノグラフの分析から
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19K02058
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
酒井 千絵 関西大学, 社会学部, 教授 (30510680)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジェンダー / 社会学史 / 雇用 |
Outline of Annual Research Achievements |
20世紀シカゴを研究対象とする本研究の課題遂行には、本来であれば、シカゴ大学およびシカゴの歴史博物館で文献調査を行う予定であった。だが、新型コロナウイルスとそれによる移動制限が続く中、2021年度は、すでに取得した資料に基づく分析を行った。また、調査テーマを現代日本に拡大し、現代社会において女性の就労を記述する社会学的研究の変容と可能性について、資料の収集とともに調査を行った。 日本では1970年代に正社員として働く夫と専業主婦の妻という世帯が増加して以降、女性の就労率は徐々に上昇してきたが、多くが結婚や出産で正規雇用の仕事を退職し、子どもが成長してから「再就職」し、非正規雇用の仕事についてきた。だが、男女雇用機会均等法や男女共同参画といった法律・政治からのアプローチに加え、男女ともに婚姻年齢や非婚率があがり、結婚や出産の影響を受けずに働く女性が増えてきたこと、また労働力人口の減少や平均年齢の上昇で、雇用元が女性従業員の雇用継続を重視するようになったことで、正規雇用で仕事を続ける女性も増加しつつある。女性の就労継続は、雇用の場における女性の存在感を増したが、男性と女性とは仕事の内容や進め方に相違があるという認識は今も根強い。こうした現代の状況を20世紀初頭のシカゴと比較した場合、どのような共通点や相違点を見いだせるのかという観点から、改めて資料の読み込みを行うとともに、製造業女性正社員へのインタビュー調査を行った。また、1990年代半ばから2010年代半ばにかけて実施してきた女性の国際移住労働についてもデータも、同様の観点から再分析を行い、女性が働くことに対する認識や自己意識の考察を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地での文献調査を行うことができず、研究の進捗は予定よりも遅れている。しかし、状況に対応して研究の方向性を修正し、現代の雇用とジェンダーの問題に議論を展開して、研究を進めるめどを立てることができた。また、これまでに行ってきた調査データを横断的に見ることで、新しい視点を加え、研究を進めることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度もアメリカでの滞在や現地調査を行う予定はまだたっていないが、可能であれば、年度内に文献調査を行い不足する資料を収集したい。また、研究計画を現代日本に拡張したが、現代日本についてのみ記述するのではなく、都市における女性の雇用の場が拡大しながら、男性とは異なる待遇や職種に限られてきた20世紀初頭のシカゴと対比し、当事者や研究者が女性の労働を男性と異なるものとして語り、議論してきたのはなぜか、男性の仕事に対し、女性の仕事はどのように描かれてきたのかを明らかにする。今年度は、1)日本を起点とする女性の国際移動、2)女性の管理職と用が進まない中で、女性労働者が自分の専門性と管理業務のバランスをどのようにとっているのか、3)女性の就労に関して、女性研究者が調査研究に参入することでどのような変化が生じるのか、4)20世紀初頭シカゴにおける女性と調査研究、の4点から研究を遂行し、研究論文として発表していく。
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Causes of Carryover |
調査計画の性質上、使用額の多くが海外(アメリカ)での調査旅費(航空券・滞在費)に割かれていたが、新型コロナウイルスの状況により、実施することができなかった。そのため、調査研究に必要な物品の購入が主となり、研究資金を予定通り支出することができず、次年度使用額が生じた。今年度は、海外調査の実施をめざすとともに、英語論文や学会報告のための英文校正、調査データの整理等に研究資金を使用する予定である。
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