2019 Fiscal Year Research-status Report
移住エスニック集団の定住化に関する研究ー在日中国朝鮮族を事例にー
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19K02059
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
金 雪 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (90795551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 梅 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20626486)
玄 善允 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80388636)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 移住エスニック / アイデンティティ / 在日中国朝鮮族 / 定住化 / 対応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバル化の進展に伴い、外国人の日本移住・定住化が進んでいるなかで、多文化主義の理念に基づく新たな国民文化を創出することは可能なのかを問うもので、在日中国朝鮮族を事例に、エスニック集団の日本への移住・定住過程における対応力(≒生活実践)とアイデンティティの変容を検討していることを目的としている。 今年度の研究実施状況は、主に次の二つの側面から整理することができる。 まず、研究業績である。①13名の「元日本朝鮮族留学生」への聞き取り調査と、2015年在日朝鮮族運動会参加者を対象とした調査に基づいた共著論文があり、来日とコミュニティ形成の推移基づいた歴史の変遷と統計処理パッケージを利用した分析からは、移動ルートや滞在形態が多様化、多層化の状況と、日本社会に安定的に定着が確認されている(金雪)。②2019年の中国朝鮮族研究学会における発表があり、「済州現地と在日における眷党(クェンダン)文化の現況―祝意広告と同窓会を事例に」からは、在日朝鮮族と在日済州人の比較のための着目点を捉えることができた(玄善允)。③中国朝鮮族の集住地域である村の現地調査とインタビューで得られたデータを用いた論文と学会発表があり、来日する前のホームランドにおける生活実践の実態を把握することでアイデンティティ解明、トランスナショナルな移動による家族観の変容を捉えることができた(林梅)。 次に、共同調査実施である。2019年8月に開催された在日中国朝鮮族の運動会で、事前に作成した質問紙を用いた「無作為抽出」の調査を実施し、「在日中国朝鮮族の生活実態に関する調査」を行った。110部を配布して92部を回収した共同調査からは、在日中国朝鮮族の家族観の変容、コミュニティ形成・強化におけるソーシャルメディアの存在意義などがはっきりと窺われ、それらのデータを用いた論文執筆の作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書の予定通りに、2019年度には①関西および関東で開催予定の「学会・研究会」に参加した(1回×2日×3名)。うち2名は学会で研究発表を行った。②研究代表者金雪氏を中心に2名の分担者が協力する形で「エスニック集団の集い」における調査を実施した。在日中国朝鮮族の集う2019年8月の在日朝鮮族運動会における3名による共同調査がその一つであり、2名が東京で実施したインタビュー調査と、2名が大阪で実施したライフヒストリー調査がある。 ただし、③移住中国朝鮮族の本拠地で海外現地調査を実施(1回×5日×3名)するという3月に予定は、周知のとおり新型コロナウィルスの影響によりキャンセルせざるを得なくなった。調査対象者の本拠地を選出し、現地調査を実施すると同時に、現地資料を収集、および各研究機関の研究者と交流する、という予定については今後補足していく所存である。 加えて、順次に調査から得られたデータを取りまとめ、学会発表や学術図書の出版あるいは学術誌への掲載を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には当初の研究計画書の予定通りに調査研究を進める。①関西および関東で開催予定の「学会・研究会」に参加する(1回×2日×3名)。②研究分担者玄氏と林氏が役割分担し、研究代表者金氏が協力する形でライフヒストリーとインタビューを実施する(3回×2日×3名)。前年度のアンケート調査に基づき、いくつかのケースを類型化したうえで対象者を選定して質的調査を実施する。③8月または3 月に、移住中国朝鮮族の本拠地で海外現地調査を実施する(1回 ×5日×3名)。 ライフヒストリーとインタビューの対象者の本拠地を訪問し、 調査を実施すると同時に、現地資料を収集、および各研究機関 の研究者と交流する。そして、以上の研究活動を通して得られた研究成果を取りまとめ、学術図書の出版あるいは学術誌への掲載を試みる。
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Causes of Carryover |
2020年3 月に予定していた、移住中国朝鮮族の本拠地で海外現地調査を実施(1回×5日×3名)が、新型コロナウィルスの影響によりすべてキャンセルせざるを得なくなったために、支年度の使用額が生じた。 本海外現地調査に関しては、2020年度に補足していく所存である。
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Research Products
(5 results)