2019 Fiscal Year Research-status Report
近年のトランスジェンダーから見る現代日本社会の性別規範
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19K02069
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鶴田 幸恵 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (00457128)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トランスジェンダー / 概念分析 / 会話分析 / アクティヴィズム / アーカイヴ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、サバティカルのためカナダのビクトリア大学にある、世界で唯一の(渡航中に二つに増えたが)トランスジェンダー講座ならびに、図書館が有する世界最大のトランスジェンダーアーカイヴズの所属となっていた。日本においてトランスジェンダーの活動家に対してインタビュー調査を行い、そこから日本におけるジェンダーを再考するというプロジェクトは、滞在先のトランス・オーラルヒストリー・アーカイヴ・プロジェクトのやり方を学びながら、日本でそれを行うのに、どのような可能性があるのかを探ることへと展開した。その中で、具体的には、(1)どのような倫理申請をすれば活動家へのインタビューを実名で公開したり、アーカイヴ化したりできるようになるのかを学び、(2)カナダでのトランスジェンダーに関する地図を大雑把であれ調査できたことから、(3)日本のトランスジェンダーの概念地図を再考することができた。また、(2)を国際共同研究強化(A)として展開できることになり、その全体像を踏まえて、(3)である日本のトランスジェンダーにかかわる概念地図を、その使用のもとで記述するという、今回のプロジェクトの全体像をよりクリアにすることができた。 それらを進行させる中で、日本のトランスジェンダー活動家に対し、かつて行ったインタビューを再分析した。それによって、トランスジェンダーという現象は、新しい分類が生まれては、書きかえられ、消えていく、という現象であり、そういうループ効果の中に、当事者たちが居て、だからこそ、自分が何者であるかを理解可能にする語り方の中に、トランスジェンダー現象が、どういう現象かということが、エンボディされていると結論づけた。トランスジェンダー現象の記述とは、「カテゴリー間の差異や類似性を語りながら、カテゴリー同士をマッピングすることで、アイデンティティを理解可能にする実践の記述」だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、日本のトランスジェンダーにかかわる現象を、独自性を含めて、その現象の複雑さを削がないかたちで記述することを目指していたが、ビクトリア大学に滞在するなかで、同様の複雑さを持ち、しかし、比較的似た現象がカナダでも起きていることを認識できた。そこで、カナダにおけるトランスジェンダーの概念地図と比較をし、その上で日本のトランスジェンダーの概念地図の独自性を、探求する可能性を見いだすことができた。これは、分析する予定であった実際の概念の使用のされ方を、日本のものと比較しつつ、見聞きしたり身につけたりした結果であり、またそこから日本のトランスジェンダーにかかわる概念の使用を考え直すことができ、予想を超える結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
インタビュー調査は、対面でするのと、オンラインでするのが同じであると言うのは難しく、コロナウイルスが収まるまでは行えないと判断する。しかし、可能になり次第、日本のトランスジェンダーの活動家に対するインタビュー調査を行う。調査が実行できない間、実名で公開するということになった際、そこに登場する第三者の取扱いをどのようにするべきか模索する。また、すでにインタビューしたデータの分析を進めることで、トランスジェンダー現象の記述と、ジェンダー現象の記述が可能になる方策を模索し、成果をまとめていく。
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Causes of Carryover |
本年度行う予定だった学会報告を来年度行うため。
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