2019 Fiscal Year Research-status Report
Basic Study on Political Function and Influence of Urban Devolution System of Cities in United States
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19K02081
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
前山 総一郎 福山市立大学, 都市経営学部, 教授 (80229327)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 都市内分権 / ネイバーフッドカウンシル / 政策機能 / 都市ガバナンス / まちづくり協議会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国諸都市の都市内分権制度である「ネイバーフッドカウンシル」(neighborhood council:NC組織)の動態を、J.ベリーらの「民主制論」の制約を越えて、ダイレクトにつかみ出そうとし、「ネイバーフッドカウンシルの政策機能, 都市政策と都市ガバナンスに与える「政策影響」の実際的な姿」について明らかにすることを試みている。初年度の今年度は、調査に着手し、基本的な分析・理論的フレームワークを構築するための土台作業を実施した。 具体的には、都市内分権形式の「ネイバーフッドカウンシル」を実質的に展開しているタコマ市(ワシントン州)へ現地調査をおこなった。また、都市内分権の形ではなくコミュニティ人材育成で著名なロングビーチ市への現地調査を行った。特に、ベンチマークとなるタコマ市に関しては、NC組織の市民理事へのヒアリング(New Tacoma NC)、同定例会への参加、市自治体担当者へのヒアリング、同市自治体の法規・要項・文書(「基準とガイドライン」等)の調査を行った。 調査の結果、実際にNC組織についての政策的位置づけの転換という形で、市自治体の姿勢として一定の政策変化が確認されるが、他方その中でも、NC組織の市民側にとって、幾つかの市自治体諸部局との連携実態の確保(会議の場),市議会議員に対する「勧告」の制度的保証が確保されており、目下のホームレス急増問題がプラスとなって、市政策と施策に対しての特定の形で「政策影響」を確保している様態が確認された。 本調査から、初年度に、NC組織の政策機能が、J.ベリーらのいう、単に対抗や協調といった問題となっているわけではないことが判明するとともに、特にNC組織の政策機能の動態のフレームワークに関わることが明らかになった。このことで、次年度以降の調査にとって、基盤となる分析・理論フレームワークをつくる土台を得たと捉えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下のことから、当初の計画以上に進展しているととらえている。 第一に、現地調査の丹念な実施が達成されたことである。具体的には、タコマ市(ワシントン州)へ現地調査をおこない、同市のネイバーフッドカウンシル組織につき、一つのネイバーフッドカウンシル(New Tacoma Neigibhorood Council)の担い手市民(理事)へのヒアリング、同定期会議への参加、市自治体担当者へのヒアリング、同市自治体の法規・要項・文書(「タコマ市自治体法規」「ネイバーフッドカウンシル基準とガイドライン」文書等)の調査を丹念におこなうことができた。 第二に、現地調査から、ネイバーフッドカウンシル組織の「政策機能」について、J.Berryら従来からの民主制論のいう、単なる「対抗」や「協調」といった問題としてあるのではないことが明らかとなったのであり、そしてとりわけ、ネイバーフッドカウンシル組織の「政策機能」にかかわるものとして、①市自治体の政策意向-②ネイバーフッドカウンシル組織市民の意向-③実際の同市における諸問題・課題-④市自治体とネイバーフッドカウンシル組織の接続の実際的様態といった、具体的な変数が「政策機能」が発動する基盤となっていることが実際の調査から抽出された形が得られており、分析・理論フレームワークの土台が比較的早い年度において得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究第二年目である次年度にあって、目下、多くの米国諸都市はコロナウイルス禍においてロックダウンされている。そこから、現地調査が必ずしも容易でない状況が現れている。そこにおいて、現地調査に重点をおいていた本研究計画の遂行にあたり、下記の点をもって工夫し、その遂行にあたることを考えている。 第一に、この事態のなかで現地調査を補う意味で、可能な範囲ではあるが、オンライン面談等でのヒアリングをもすすめたい。これまで築いてきた、幾つかの都市の自治体関係者とのコネクションを生かして、ネイバーフッドカウンシルの現状・課題、また進捗の在り方を確認したい。 第二に、ネイバーフッドカウンシル事態が開催されない事態が各地であらわれているが、他方でネイバーフッドカウンシルがオンライン会議で開催される状況も現れている。このありかたにも着目し、オンラインヒアリング、や自治体やネイバーフッドカウンシルのweb情報を調査することとする。 第三に、本計画の前提ときっかけをなした、過年度に実施した科研費研究計画(基盤研究(C) 16K04036 、前山総一郎「米国の都市内分権の社会的機能に関する基礎調査研究」2016~2018年度)との理論的接合と整理をこの期に行いたい。今期研究計画において探求しているネイバーフッドカウンシルの「政策機能」は、つよくその「社会的機能」と連動していることからである。そして目下、比較的早期に「政策機能」の分析・理論フレームワークの土台がみえてきたことからそのことが可能ととらえている。 第四に、この期に、学会発表とともに、本研究成果を社会的発信する工夫に、ホームページ設置などで力を入れたい。
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Causes of Carryover |
昨年度末に現地調査および国内の資料調査に赴く予定であったが、コロナウイルス禍のため調査実施ができなかったため、次年度使用額が発生した。 次年度にあっては、HP立上げ等として社会的発信に力を入れることにむけての支出額を考えている。
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