Project/Area Number |
19K02081
|
Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
前山 総一郎 福山市立大学, 都市経営学部, 教授 (80229327)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 都市内分権 / ネイバーフッドカウンシル / 政策機能 / 都市ガバナンス / まちづくり協議会 / ホームレス / コロナウイルス / 避難所(シェルター) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は,「米国諸都市のネイバーフッドカウンシルが『都市政策と都市ガバナンスに与える実際的影響力とその機能』の実相を解明するものである。2019年度には,主フィールドとするタコマ市(米国ワシントン州)の自治体の「法規」・関係の要項等資料についての入念な調査,また市の政策意向とネイバーフッドカウンシルとの組織・意向伝達の接続についての調査を実施した。 本年度は,その成果を土台として,ネイバーフッドカウンシルの政策機能をベースとしつつ,その社会的機能との関わり(都市サービス)をも射程に入れて,同地における「ネイバーフッドカウンシルをとりまくダイナミクス(動態相)」を明らかにすることに取り組んだ。本年度はコロナ禍により現地調査に赴くことはできなかったが,代わりにインターネット,文献,現地関係者へのメールでの調査を行った。「コロナ禍でのホームレス問題にかかわる,ネイバーフッドカウンシルの対応と市自治体の政策」という事象が恰好の課題テーマとなることが判明し,それに基づいて調査を行うことができた。 その結果,①都市サービスの地平では,コロナ禍でのホームレスへの避難所提供サービスでは,自発的な教会やNPOによるサービス提供が圧倒的に主となっていること(ネイバーフッドカウンシルは緩やかな連携をとっていた), ②政策・公共的決定の地平では,避難所設置に関わる市の政策決定に対して,ネイバーフッドカウンシルが,その仕組み制度の組織的接続を利して,実際に一定の関わりと影響力行使とその可能性を持ったことが判明した。もって,コロナ禍でのホームレスへの避難所という地域問題へのサービス・政策にむけて,ネイバーフッドカウンシルの,地区住民の共的な意思に基づいて,制度的接続を利しながら健全な形で市の政策形成・施策遂行を現実的に促すという,ネイバーフッドカウンシルが果たす機能の実際が,本年度の成果として得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下のことから,おおむね順調に進展している。 当初は,昨年度の延長線上で,現地におけるネイバーフッドカウンシル理事者へのヒアリングをさらに続行する方向であったが,コロナ禍で渡米調査が不可能となり,方向転換を余儀なくされた。 けれども,各方面に確認をおこなう中で,本研究計画にかかわるテーマとして,「コロナ禍でのホームレス問題にかかわる,ネイバーフッドカウンシルの対応と市自治体の政策」ということが本研究計画の枠組みにおいて恰好の課題テーマであることが判明し,この問題に取り組むこととなった。この問題に研究を集中したことによって,それぞれの地区における,棲みつく「ホームレスの増加問題」にかかわって,ごみ処理,避難所の設置,ホームレス者の誘導等の関連サービスについて,市と市民サイド(教会,NPO)のサービス提供の容態,市自治体の政策のありようと実施,そして,それに対するネイバーフッドカウンシルの政策的影響の実相が把握され浮かび上がることとなった(確認が必要な点についてはメールでのヒアリング調査等で補足した)。それにより,本研究計画が目指す「都市政策と都市ガバナンスに与える実際的影響力とその機能」の実相を解明することの第二段階としての有効な成果が得られた。以上から,おおむね順調に進展していると捉えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の三年目(最終年度)である次年度にあって,これまでの実施成果をもって,またさらに加えてつぎのことを見込んでいる。 第一に,主フィールドとしてのタコマ市の調査をさらに精密化する。主フィールドとしてのタコマ市(米国ワシントン州)の諸ネイバーフッドカウンシルと自治体の公共決定をめぐる状況をさらに確認し,本事例をベンチマークとしつつ「都市政策と都市ガバナンスに与える実際的影響力とその機能」の実相についての知見を確定したい。 第二に,バーミンガム市(米国アラバマ州)など他都市でのネイバーフッドカウンシルと自治体の公共決定の実相に関わる調査を,可能状況で現地調査をおこない,ベンチマークとしてのタコマモデルとの比較調査に着手する。なお,コロナ禍がとどまらず現地調査ができない場合には,インターネット,文献調査,メールヒアリングでの調査に切り替えて実施する。 第三に,タコマ市でこれまで実施した現地調査,および他都市の調査を踏まえて,「米国諸都市のネイバーフッドカウンシルが都市政策と都市ガバナンスに与える実際的影響力とその機能の実相」について,類型化等を念頭に,一定の理論化をおこないたい。 この視座での研究は日本はもとより,米国本国でも実施されたことがないことから先端的研究となると見込まれる。ちなみに,米国の関連諸研究は,J.ベリーらを中心とする民主主義制度論からの視点であり,バイアスが強く,これを乗り越える研究が求められており,本研究計画はそれを推進し貢献しようと努めている。
|
Causes of Carryover |
研究計画の大きな部分として,米国の諸都市への現地調査を想定してきたが,とくに昨年度(当該研究計画の2年目)にはコロナ禍において旅費として使用できなかった状況があり, 次年度使用の額が発生した。 その額を用いて, 次年度,集中して現地調査をおこない,また社会的発信(海外研究誌への投稿)をすることを計画している。
|