2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K02084
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Research Institution | Atomi University |
Principal Investigator |
つる 理恵子 跡見学園女子大学, 観光コミュニティ学部, 教授 (20227474)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小農の復権 / 農業の近代化 / 市民皆農 / 農の担い手 / 暮らしの思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、3つの柱を立てている。1つめは、「小農論」の系譜研究である。国の農業近代化政策とは大きく異なる主張とそれに基づく実践を展開し、「異端」とされた研究者たちについて整理し、「小農論」の系譜をまとめる。宮本常一、安達生恒、守田志郎、津野幸人、内山節、徳野貞雄を取り上げる。2019年度は、宮本常一、守田志郎、徳野貞雄、津野幸人らの関連書籍を読むと共に、小農学会が刊行した『新しい小農』、日本村落研究学会編集の『年報 村落社会研究 特集:小農の復権』(第55集)も取り上げた。なお、『年報 村落社会研究』(第55集)には私の論考も掲載されており、複合的農業経営あるいは複業的(農業と農業以外の仕事の組み合わせ)なやり方で地域に根を下ろす人々の暮らしを明らかにした。 2つめは、世界的潮流の概要と国内の動きの概要把握である。世界小農宣言の作成等の背景、家族農業の再評価についての世界および日本国内の動きを把握することに努めた。国内では「小農学会」、「家族農林業プラットフォームジャパン」、「日本有機農業研究会」がその中心である。 3つめは、日本各地の「小農」の事例研究である。「小農」本人のライフヒストリーや農業・暮らし全般について聞き取りを行うだけでなく、 本人が関わる(創り出す)社会的ネットワークや集団・組織等も捉えることを通して、社会創造の現状や課題、今後の展望を描く。 鹿児島で40年近く有機農業に取り組むH氏から詳しくお話をうかがった。また、H氏と鹿児島県有機農業研究会、全国合鴨水稲会、小農学会等で志を同じくする(あるいは極めて近い)農業者や研究者、技術者の方々にもお話を聞くことができた。聞き取りはまだできていないが、山形県内で長年地域農業のリーダー的存在で、かつ農業者の立場から文筆活動・社会的活動を続けてきた佐藤藤三郎氏の著作も読み始め、聞き取りの準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、3つの観点からの考察を同時並行的に進めることにしている。その中で、キーパーソンへの聞き取りがやや遅れ気味ではある。ただ、聞き取りや参与観察を通して濃密なデータは得られているので、来年度2020年度はもう少し聞き取りの対象者を広げていくことで、予定通りに進めることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度以降は、キーパーソンへの聞き取りを集中的に行う。その際、キーパーソンのライフヒストリーに加え、ムラあるいは地域社会との関連性、キーパーソンが有する多種多様な社会的ネットワークの広がりや累積に着目する。それらが創り出す農的世界の社会変革へのインパクトを捉えることにつながると考えている。 ただ、問題は、コロナ禍の影響である。状況が許す限りという限定つきではあるが、可能な範囲で最大限の努力をしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究計画に記していた物品費に関して、新たにモバイルPCを買う必要がなかったためである。 ただ、既に所持しているモバイル用PCの調子如何では、2020年度購入の必要が生じるかもしれない。必要なければその分を関連書籍、調査や学会報告等の旅費交通費に使用する。
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