2020 Fiscal Year Research-status Report
幼児期における人間関係形成と家族の社会関係資本の構築
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19K02094
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Research Institution | Kwassui Women's College |
Principal Investigator |
石川 由香里 活水女子大学, 健康生活学部, 教授 (80280270)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会関係資本 / 仲間づくり / 幼児期 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症の拡大防止に伴い、昨年からの継続を予定していた参与観察については、2度にわたる長期間の中断を余儀なくされたことにより、十分な実施には至らなかった。また今年度はそれと並行して、保護者へのインタビュー調査の実施を計画し、園を通じて書面にて協力を呼び掛けたものの、対面での対応が難しいことから、実現がかなわなかった。 業績としては、昨年度から今年度の初めにかけて実施してきた参与観察の結果をもとに、幼児期において取得される道徳性には、2つの異なる水準があることを示す論文を執筆した。内容としては、大人が介在する場面と子どものみで構成される場面とでは、異なるかたちでルールが尊重されている様相を描くことを通じ、ルール取得における子ども集団の働きについて、明らかにしたものである。さらにそれを幼児教育に期待されている社会情動的スキルの育成との関係について考えたとき、保育者の指導の下で行われる枠づけがいわば実践者によってデザインされる社会情動的スキルの育成であり、そこで培われる他律的道徳性によって継続的に秩序が支えられていること、また集団の目標に向けて進むためには、そういった枠づけが有効であると結論付けた。その一方で、子どもたちだけによって構成される自由遊びの場面で観察可能なものとは、その場・そのときに生み出されるルールとその遵守であり、一時的ではあるものの自律的道徳性のもとに秩序が維持されていることであった。そのような自由遊びにおけるルール作りとその共有には、「他者との協働」を支える社会性と「感情の制御」に含まれる柔軟性とが、社会情動的スキルにかかわる要素として見出されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の防止に伴い、計画していた参与観察、インタビューの実施がかなわなかったことが、当初の計画から遅れている大きな原因である。 参与観察については2度の緊急事態宣言により長期にわたる中断を余儀なくされ、実施可能だったのは予定していた期間のうち4分の1ほどに過ぎなかった。日常的な子どもたちの様子と保護者とを結びつけるという当初の計画を踏襲することは、さらに物理的に難しかった。参与観察は、昨年度から同一クラスの子どもたちを対象としてきたが、その子どもたちが2021年3月で卒園を迎えたため、来年度への継続はできないこととなる。 インタビュー調査については、卒園する前に保護者に直接アプローチし、実施する計画を立て、新型コロナウイルス感染状況の落ち着いている時期に園を通じて保護者に調査協力の依頼をかけた。対面状況を取ることが難しいことを考え、オンラインでのインタビューも視野に入れてお願いしたものの、実際には協力を得られず、断念せざるを得なかった。 こうした状況を踏まえたとき、研究目的を達成するためには、研究方法に変更を加えざるを得ないという結論に達した。具体的な変更の方向性としては、郵送による質問紙調査への切り替えを行うことを計画している。そのために調査票の内容について検討を行ったうえで、改めて学内の倫理審査を受けるのに要する時間も必要となった。 以上のことから計画時に予定していた今年度中の調査完了に至らず、全体として研究はやや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症が収まらない状態にあっては、当初計画していた対面でのインタビュー調査の実施は断念せざるを得ない。そこで方法を調査票調査に切り替えてデータを収集する予定である。もともとの計画では子ども同士のやりとりの観察から、親の交流関係をたどることを計画していたが、調査票調査では保護者の回答によって子どもの友人関係を知るとともに、それにもとづく保護者同士の関係性についてたずねるという形になる。しかしいずれの方向からであるにしても、子どもの社会関係資本と親の社会関係資本との関連性を探るという研究の目的は果たせると考えている。インタビュー調査から期待されていた深い個別性の掘り下げは難しくなることは否めないものの、匿名性が保たれることによって、インタビューでは尋ねにくかった学歴あるいは年収といった項目についても盛り込むことが可能となり、また多くのデータを収集できることによって、より一般化された結果を得ることが期待できる。 計画としては、まず4月中に質問紙の内容を確定させ、学内の倫理委員会に倫理申請を行う。倫理審査を通過したのち、5月中に質問紙の印刷と並行して長崎市役所こども部幼児課ならびに市内の認可保育施設・認定こども園に調査の許諾をいただき、6月に本調査を実施し、7月初頭までに調査票の配布・回収を目指す。7月・8月の時期においてデータ入力およびデータ・クリーニングを完成させ、9月以降にデータ分析を行えるための準備を整える。そして今年度中には第一次調査報告書を完成させ、調査にご協力いただいた関係施設にあてて配布できることを目指す。
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Causes of Carryover |
予定していたインタビュー調査が実施できなかったため、謝金の支出がなかった。また、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、学会等がオンラインに切り替わったので、想定していた旅費の支出もなかった。次年度は、アンケート調査を行う計画であり、調査票の印刷費・郵送費ならびにデータ入力作業費などに支出をする予定である。
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Research Products
(1 results)