2019 Fiscal Year Research-status Report
教育における差異のジレンマからの脱却に向けた不平等形成スタンダードの脱構築
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19K02099
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
二羽 泰子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任助教 (20802507)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マイノリティカテゴリー / 不平等 / スタンダード |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、欧米中心の研究において、マイノリティがどのように表象されているかについて分析を進め、形成されている不平等スタンダードがいかなるものであるのかについて研究を行った。 性・ジェンダーの領域では、フェミニスト理論や運動の発展に伴い、教育においてもスタンダードが少しずつ変化する傾向にあった。第1段階においては、同等の機会が保障されれば、女性も同等の能力を発揮できるとして、機会の不平等を是正することが求められ、教育や労働の分野で大きな成果があった。だが、機会が保障されても、スタンダードは男性によって作られているために、女性の能力が正しく理解されていないとして、第2段階では、男性との差異が強調され、そうした女性の差異への理解が求められるようになった。次に、女性・男性という二項対立に隠れていた問題、すなわち多様な性のあり方や、女性の中でも異なる不平等経験をしているマイノリティ、すなわち黒人女性のような別のマイノリティ性のある人々の存在に注目が集まってきた。この段階は現在進行中であるが、学校や企業においてダイバーシティやインクルージョンなどとして、多様性との共生に関する取り組みが増えている。 人種研究では、常に白人対有色人種という枠組みが問題となっている一方で、民族研究では、多様な文化の理解や統合の可能性について関心が集まっている。だが、世界の紛争や植民を通して歴史的に形成されてきた人種と民族の差別問題は切り離せない問題である。したがって、この領域の研究の乖離が人種・民族研究のスタンダードによる不平等性を捨象してきたと考えられる。 障害の問題は、常に支援や配慮の問題として論じられる傾向にある。それ以外の解釈(例えば社会モデルなど)が理論上はなされていても、性・ジェンダーのように、教育や労働の現場といった社会全体に影響をもたらすものとはなっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルス感染症の世界的流行のため、年度末に海外調査を行うことが難しくなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は本格的な海外調査を予定していたが、コロナウイルス感染症の影響で海外調査は本年も困難な見込みである。したがって、本年度行ってきたマイノリティカテゴリーや不平等スタンダードの形成に関する研究を継続する。2020年度はそれに加えて、欧米以外の地域の研究を加え、欧米を中心とする研究と異なる知見について分析していく。そのうえで2021年度の海外調査につなげていく。
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Causes of Carryover |
海外調査ができなかったために残額が生じた。2020年度の海外調査も困難な可能性が高いが、既に発表が決まっている国際学会や海外との共同研究による出版を目指しているため、それらに使用する予定である。
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