2023 Fiscal Year Annual Research Report
教育における差異のジレンマからの脱却に向けた不平等形成スタンダードの脱構築
Project/Area Number |
19K02099
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
二羽 泰子 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (20802507)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マイノリティ / 排除 / 差異のジレンマ |
Outline of Annual Research Achievements |
タイにおける性的マイノリティへの調査および障害者をめぐる差別や排除の経験や状況について調査し、以下のような成果を得た。 まず、タイにおける性的マイノリティのとらえ方は、日本や欧米のそれとは大きく異なっており、特にトランス女性への排除・差別が、都市部で稀であることが分かった。ゲイについても、タイの当事者が、SNS等で数名のアメリカ人と交際する中で、タイの方が文化的には生きやすいと感じたと語っていることから、都市部においては当事者がカミングアウトしやすい文化があることを窺うことができた。しかしながらタイにおいても、性別が女性のトランス男性やレズビアンについては排除経験を強調する人が多く、性的マイノリティ内でのジェンダー格差も明らかになった。 次に障害者についても、欧米や日本とは異なる状況が明らかになった。重度の身体障害者で日常生活に介助を要する障害者は、多くの国で排除や差別の経験に直面しているが、タイでは、重度障害者よりも仕事に携わる比較的軽度の障害者の方が多くの排除を経験していた。重度の障害者が排除を経験しにくい理由として、タイ仏教の教えをあげることができる。一方就労の場においては、西洋と同様の資本主義の考え方が根付いていることから、西洋と同様の排除を経験しやすいことが分かった。 同様の理由から、西洋からの文化を色濃く受け継いでいる特別支援教育の現場では、排除や差別が起きやすい一方で、一般教育の現場で学歴競争がそれほど強くない場合には、排除や差別が起こりにくいことが分かった。 以上より、西洋において排除を経験してきたマイノリティが、異なる文化の下では必ずしも排除されないことが明らかになると同時に、西洋と同じ考え方がベースにある場においては、同じような排除に直面することが明らかになった。
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