2021 Fiscal Year Research-status Report
Sociological Research on Nikkey Language in Brazil
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19K02114
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
紀 葉子 東洋大学, 社会学部, 教授 (40246781)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日系コロニア / 日系ブラジル人社会 / 言語資本 / ハビトゥス / 文化資本 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
Covid-19の世界的な流行により現地調査ができない状況にあった。現地調査ができないまま、コロニア語と表現されている日系ブラジル人が日常的に用いる日本語について、仮説構築を行うばかりで検証に進むことができなかった。 コロニア語の特徴として、固有名詞のみならず数詞や認知度の高い一般名詞がポルトガル語で表現され、日本語とポルトガル語の混交が認められる。こうした言語表現を現地の日系ブラジル人は(殊に日本から来た)日本人の前で恥じる傾向が認められる。実際にはかなり流暢に話せるにもかかわらず「日本語は話せない」と表現されることが少なくない。その背景には、ベースとなっている日本語が必ずしも標準語とは限らず、地方言語(方言)であることも理由のひとつとして考えられる。標準語でないことに加えポルトガル語が混ざることを自覚しているコロニア語話者のハビトゥスは、ブルデューがフランス南部地方の農民の「フランス語は話せない」という言葉から分析したそれと共通している。コロニア語話者の言語資本をそのライフストーリーと関連づけながら分析することが必要である。 研究期間延長期間に、どのような日本語教育をどのように受けてきたのかを質問紙ならびにインタビュー調査を行い、コロニア語話者の言語資本とコロニア語の特徴を明らかにしてゆきたい。 また、コロニア文学には女性言葉がしばしば登場するが、実際にコロニア語で会話を楽しむ女性の集まりで、女性らしい、いわゆる女ことばが発せられることは稀である。コロニア語がジェンダーレスな言語となっているのかどうかについても、会話の様子の録音保存をしながら確認してゆきたいと考える。 最終年度ではあるものの、実査ができない状態が続いたことにより結果らしい結果が出せていないことは否定できない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Covid-19の世界的な流行に日本はもとより調査対象地であるブラジルもその渦中にあり、研究期間中に渡航し、現地調査をすることが不可能であっった。ウェブを利用してリモートで質問調査等を行うにも、対象者が高齢者であることや親しくコロニア語で会話をする場を設置すること自体が困難であり、ひたすら感染の縮減を祈るしかなかったため、現地調査研究は遅れている。 仮説の構築に留まり検証としての現地調査ができていないため、研究成果らしい成果も出せていない。
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Strategy for Future Research Activity |
Covid-19の世界的感染状況は地域的に爆発的に拡大することはあっても、ワクチンの普及等に伴い、当初のように人流を抑制するだけの対策からは脱しつつある。研究期間の延長が認められたので、22年度には渡航し、現地調査を行いたい。 受傷した際にお世話になったサンタクスルス病院の医師に医療的な助言を受けつつ、サンパウロの熟年クラブ連合会本部の集まりを中心にコロニア語の採取や質問紙を用いての調査、コロニア語話者へのインタビュー調査を行う。8月9月の学生が夏休み期間となる時期に、実査を行い、同じく2月の学生休業期間に調査をまとめた内容についてサンパウロ大学日本語専攻の教員からレビューを受け、研究の公表に向けて準備を進める。3年で計画していた現地での調査課題を1年間でまとめて行うことになるが、可能な限り当初予定の調査計画を実施したいと考える。
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Causes of Carryover |
Covid-19の感染拡大により、渡航禁止措置に従い、現地調査研究ができなかったため。パンデミックに対処するワクチンの摂取状況も進み、渡航解除がなされることを見込み、2022年度に現地調査を行い、調査計画の完遂を図流ため、研究期間の延長を申請した。感染拡大期間の遅れを取り戻すことは容易ではないが、当初計画の遂行し、仮説の検証に努めたい。
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