2019 Fiscal Year Research-status Report
初期CATVの自主放送をめぐる思想と実践―メディアの考古学および民俗学の視座から
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19K02119
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
飯田 豊 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (90461285)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CATV / 自主放送 / DIY / 趣味 |
Outline of Annual Research Achievements |
CATVの自主放送はこれまで、「コミュニティメディア」「地域メディア」「パブリックアクセス」といった理念にもとづいて、その社会的意義が論じられる傾向が強かった。それに対して、本研究では2019年度、これまで等閑視されてきた趣味文化としての側面を掘り下げた。 1963年には岐阜県郡上八幡町で、日本で初めての自主放送が開始される。組合長の自作趣味が高じて運営され、わずか2年で行き詰まってしまうのだが、地元劇団のメンバーが中心となって、精力的な番組制作がおこなわれた。とりわけ、地域の婦人会活動と結びついた、電話を活用した双方向的な番組「テレビ婦人学級」が注目に値する。本研究では、先行研究が見落としていた一次資料を紐解きながら、CATVの自主放送が当初から持っていた可能態を明らかにした。また、かつて岡山県津山市に存在していた津山放送株式会社は、1977年から放送していた看板番組で「Do It Yourself わたしのテレビ」を謳っていた。これは欧州で広がりつつあった「自由ラジオ」運動の理念、あるいは日本で若者の趣味として流行の兆しを見せつつあった「ミニFM」の実践とも重なり合う。本研究では、当時おこなわれた広告出稿者調査や受け手調査などを再解釈し、津山放送の実践を再評価した。 そして以上の研究成果を、飯田豊「DIYとしての自主放送 ―初期CATVの考古学」(神野由紀・辻泉・飯田豊編著『趣味とジェンダー ー〈手づくり〉と〈自作〉の近代』青弓社、2019年)にまとめた。 また、庄司章氏に対する聞き取り調査を複数回にわたって実施した。庄司氏は1971年以降、東伊豆有線テレビ放送で長年にわたって自主放送番組の制作を続けた人物であり、日本におけるCATVの自主放送の歴史にもっとも造詣が深い。聞き取りの成果については、次年度以降、論文等にまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査および聞き取り調査を、おおむね予定どおりに遂行することができた。ただし、年度末は新型コロナウィルス感染拡大の影響で、フィールドワークや対面での聞き取り調査を自粛し、電話による聞き取りに限定するなど、研究計画の一部変更を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、CATVの自主放送の歴史に関する文献調査や聞き取り調査を完了した上で、70年代におけるビデオ・アートの動向を補助線として、CATVの自主放送と、ビデオ・コミュニケーション運動やDIY文化との関係を明らかにする予定であった。だが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で聞き取り調査の難航が予想されるため、70年代のビデオ・アートに関する文献調査を先行して実施する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、フィールドワークや対面での聞き取り調査を自粛し、電話による聞き取りに限定するなど、研究計画の一部変更を余儀なくされたため、次年度使用額が生じた。2020年度もしばらくは聞き取り調査の難航が予想されるため、文献調査を先行しておこなう予定であるが、延期したフィールドワークや聞き取り調査を追って実施することで、当初の予定どおり助成金を使用する。
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Research Products
(3 results)