2022 Fiscal Year Research-status Report
初期CATVの自主放送をめぐる思想と実践―メディアの考古学および民俗学の視座から
Project/Area Number |
19K02119
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
飯田 豊 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90461285)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CATV / 自主放送 / ビデオ・アート / 中嶋興 / コミュニティ・メディア / テレビ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度に引き続き、初期ビデオ・アートとの接点を手掛かりに、日本におけるケーブルテレビ(CATV)の自主放送の歴史研究をおこなった。1970年に「ビデオアース東京」を立ち上げたビデオ・アーティストの中嶋興氏、1972年に発足した「ビデオひろば」のメンバーのひとりに聞き取り調査をおこなうとともに、慶應義塾大学アート・センターが管理している中嶋氏およびVIC(Video Information Center)のアーカイヴを活用した。 また2021年度には、1970年代から90年代にかけて岡山県津山市で独創的な自主放送をおこなっていた津山放送に関する資料を、その当事者(2022年3月ご逝去)のご厚意で譲り受けることができたため、引き続きその分析をおこなった。 本研究課題が目指すところはCATVが産業的に確立するまでの前史ではなく、「コミュニティメディア」や「地域メディア」の萌芽を遡及的に発見することでもない。本研究ではこれまで、下田有線テレビ放送、上田ケーブルビジョン、東伊豆有線テレビ放送、沼津放送、津山放送、唐津ケーブルテレビジョンなどを事例として、1970年代のCATVに現在とは異なる可能態が認められることを実証できている。日本で独自に育まれてきた自主放送の水脈に、海外で生まれたビデオ・アートの潮流が合流することによって浮上した理念や実践に注目することで、このことを達成できたのが本研究課題の独創性のひとつといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大の影響が依然として懸念されたが、当初の計画以上に聞き取り調査を実施することができた。また、2021年度までに収集した資料の分析についても成果を挙げることができ、論文の刊行やシンポジウム等での研究報告をおこなうことができた。したがって本研究課題は、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は2023年度が最終年度であり、最終成果を単著にまとめることを予定している。すでに出版社の企画会議で承認も得られていることから、2023年度は出版計画を遅滞なく遂行することを、研究推進のための方策とする。
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