2020 Fiscal Year Research-status Report
地域特性を視座とする新たな提言のためのハンセン病療養所将来構想の比較研究
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19K02125
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
城本 るみ 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (60302014)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ハンセン病 / 療養所 / 地域特性 / 将来構想 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度当初は、国立2か所(奄美和光園、駿河療養所)、民間1か所(神山復生園)の療養所を訪問し、現地調査を行うことを計画していた。地域に開かれた療養所の成功事例としての奄美和光園、国立療養所の中でもっとも開所が遅かった駿河療養所の現状と療養型病棟ならびにホスピス病棟を備えた病院として運営されている私立療養所神山復生園の現状から、療養所の新しい発展形態を理解したいと考えていた。残念ながらコロナ禍においていずれの療養所も訪問することがかなわず、今後も高齢者療養施設である療養所の直接訪問は厳しいことが予想される。2021年度は訪問を受け入れて頂ける療養所があれば、療養所職員や学芸員との面談を計画したい。 2020年度の実績は文献やオンライン学会などで得られた療養所の将来構想に関する問題点の整理にとどまる。いずれの療養所も現状では①医師・看護師・介護員の欠員、②地域における委託診療の問題、など医療・介護体制の充実という喫緊の課題に直面していることがあげられよう。これらの医療課題は高齢者施設としてのみならず、ハンセン病療養所の入所者の在園保障問題とも深く関わってくることが特徴である。 療養所入所者は隔離という形で家族や故郷から切り離されてきたため、終生にわたる在園保障が認められているが、国立療養所では国の公務員削減方針の影響により療養所職員が削減対象になっていくことによって、入所者の在園保障自体も困難になってしまう。高齢化に伴い、入所者の声を届ける役目を担ってきた各療養所自治会や全療協の存続も危ぶまれてきている実情の中で、国立療養所を職員削減の対象からはずすことができるのか、国や市民の関心が決して高いとは言えないハンセン病問題についての解決には、療養所所在地の地方自治体のみならず国家レベルでの政治的な動きが不可欠なのではないかと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
年度を通してコロナ禍により高齢者施設である療養所に出かけることができなかったこと、また下半期は研究代表者本人の眼疾患や骨折等の体調不良により、論文執筆をはじめとする研究活動がまったくできなかったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は2020年度にかなわなかった3か所の療養所訪問を目指したい。療養所の自治会関係者から直接話を聴くことは難しくとも、社会交流会館の学芸員や施設職員の話を聴くことがかなうのであれば、地域の現状を理解するためにも、なるべく現地に足を運ぶ方策を考えたいと思う。 しかし実現が難しいのであれば、可能な限りオンライン面談の試行など、なるべく先方に負担がかからない形で療養所関係者との交流を目指したい。
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Causes of Carryover |
(理由):現地調査を予定していた出張計画がコロナ禍により、すべてキャンセルせざるを得なくなったため。 (使用計画):2020年度に実施できなかった3か所の療養所(奄美和光園、駿河療養所、神山復生園)訪問の実施を目指し、それらの療養所を比較検討する予定にしている。今年度も出張できない場合は、各療養所自治会へ連絡をとり、関連資料の入手やオンライン面談の実施に向けて動きたい。
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