2022 Fiscal Year Research-status Report
地域特性を視座とする新たな提言のためのハンセン病療養所将来構想の比較研究
Project/Area Number |
19K02125
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
城本 るみ 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (60302014)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ハンセン病 / 療養所 / 地域特性 / 将来構想 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は関連学会が対面とオンライン双方で行われた。そこへの参加をきっかけとして、あらたに療養所関係者との接点をもつことができたことにより、1か所ではあるが療養所の訪問が可能となった。 当該療養所は地元自治体の協力もあり、ここ数年で交通インフラの整備やハンセン病啓発施設の設置により大きな変貌を遂げている。他地域の療養所と比較すると、僻地ではなく都市近郊平地に所在しており、地元自治体は海外企業誘致にも力をいれているため、今後地域経済の発展も見込まれている。県庁所在地や市街地から通勤圏内に位置しているため、介護スタッフや職員の通勤等にも地の利が大きい。医療スタッフの確保については地元大学との連携がはかられており、また人材確保の条件として通勤圏、生活圏としての地の利も大きい。土地活用については入所者援護会の所有部分を運動公園として活用すべく地元自治体からの申し入れもあり、周辺に整備された小中学校等の設立経緯も注目すべきものがあった。交通インフラや周辺環境の整備が整ってきたことによって、療養所の将来像そのものも変わってきており、地域特性が活かされた事例の一つであると考えられる。 また歴史資料館の新設に関して、自治会がどのように関わり、その実現に向けてどのような役割を担ったかをはじめとして、今後の自治会の存続やありかたについて考えるヒントを得られた。あわせて自治会図書館に残されている歴史的一級資料の管理や今後の保存や今後のハンセン病資料館の方向性についても大きな示唆を得ることができた。 コロナ禍にありながら先方のご厚意によって療養所の訪問が実現できたことで、地域特性を活かした新たな発展形態を理解するために非常に有益な現地調査が行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度に行った療養所訪問は先方の学芸員ならびに療養所自治会が受け入れ態勢を整えてくださったおかげで実現に至った。しかし訪問時は当該地域のコロナ感染状況があまりよくない時期であったため、現地到着後、高齢者施設である療養所運営側としては研究訪問も含めて外部からの受け入れには消極的であることが理解できた。そのため他の療養所の現地調査については断念せざるを得ないと判断し、2022年度の療養所訪問は1か所にとどまった。 また研究者本人が眼疾患により論文執筆等の研究活動に支障をきたしている。
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Strategy for Future Research Activity |
もともと本研究課題は療養所所在地に直接赴き、その地域の特性と将来構想との関連性について考えることをテーマとするものであるが、コロナ禍によって高齢者福祉施設でもあるハンセン病療養所の訪問自体が難しい現状におかれている。感染状況が落ち着いても、今後も外部からの療養所訪問の受け入れそのものが厳しい状況は今後も続くことが想定される。 幸い研究期間の再延長を認めて頂いたので、現地調査が難しいなりの結果は出したいと考えている。今回のような感染症流行が与えた療養所運営への直接的間接的影響も今後の将来構想につながるヒントがあると考え、課題解決にむけた理解を深める努力をしたい。 また将来構想を考えるにあたり、各療養所自治会等に残されている資料保存についても大きな課題であることがわかったので、その視点も含めて研究課題につなげたいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由):地域特性を理解するため複数箇所の現地調査を計画していたが、高齢者福祉施設である療養所の受け入れを見合わせているところが多く、学会参加および療養所は1か所しか調査に行くことができなかったため。 (使用計画):可能な限り関連学会に参加し、療養所関係者や専門家との対面による意見交換を行う。またこれまでに予定しながら実現できなかった療養所の訪問先を再検討し、受け入れてもらえるところを優先的に選択し、引き続き現地調査が行えるよう努力する。また2023年度においても現地調査が難しいようであれば、研究の最終年度にあたるため関連する文献資料の購入にあてたい。
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