2021 Fiscal Year Research-status Report
社会的実践としてのアメリカ社会調査をめぐる概念・制度史的考察
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19K02128
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北田 暁大 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (10313066)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会学 / アメリカ社会学 / シカゴ学派 / 科学社会学 / デュボイス / ハルハウス / 社会的なもの / ラザースフェルド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「社会と名指される集合的対象を、特定化し、その集合的状態の変化・改善を、何らかの統制された方法を用いて目指す社会的実践」としての社会調査の歴史・社会的機能を、19世紀末~20世紀半ばのアメリカ社会学、行政、財団の動向に照準して分析するものである。焦点を当てたのは、シカゴ学派とは異なる形で社会調査にかかわり、「社会的なもの」を追究したデュボイス、ハルハウスグループの社会的・学問的実践である。以上の研究計画そのものは昨年度までと同様である。 一方で、コロナウィルスの流行を受けて、現地での一次史料収集に大きな困難がが生じたため、いったんは日本において入手しうる文献・資料に焦点を定め、①これまでの研究過程のなかで深く解釈・分析に入っていなかったデュボイス、ハルハウスグループの伝記的資料、②アメリカにおける社会学の「社会的なもの」との関係性を大きく変化させたP.ラザースフェルドの調査手法の技術的背景、③②を理解するために必要となる統計学、統計学史の知識等に焦点を当て、研究プロジェクト全体の基盤を充実させることとした。 こうした研究の方向性画定を承けて、一次資料を収集すべく、ウィーンのラザースフェルドアーカイブでの調査について、コロナ禍による滞在研究への影響等を鑑み、総合的かつ慎重に検討したが、今年度に関しては難しいとの判断に至らざるをえなかった。 国内での「下準備」作業がだいぶ進展した状態であるので、2022年度には、今年度間に得た蓄積をもとに、アメリカ、ドイツ語圏等での一次史料収集分析を本格化していくこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度同様、コロナ禍の影響で、当初予定していたアトランタ、シカゴ、ドイツでの在外調査の実施が困難となり、国内で集められる史料・資料に限定して、当該トピックに関連する研究状況、入手可能な一次文献をもとに研究作業を再構成した。また無理に海外での研究を強行するのではなく、ポスト・コロナ状況でのより適切な研究遂行のため、「概要」にも記したように、研究の基礎をなす事柄について、国内で可能な限りの掘り下げを試みた。 とはいえ、研究の理論的・方法論的方向性はおおむね達成できているが、現地での一次史料収集の機会が著しく制限され、史料内在型の研究にやや遅延が生じていることは否定しがたい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までと同様、今後の研究については、在外調査の可否がきわめて重要なファクターとなる。現状では、一週間程度の在外調査を想定したとしても前後あわせて膨大な出張期間を要するため、資金的にも通常の職務的にも当初の予定通りの実行が難しいとの判断は否めない。ただし現状、コロナ禍はある程度の収まりを見せており、今年度はなるべく早めに渡航予定を立て、可能な範囲での一次史料収集に努めたい。これまでの国内での作業で得られた知見をもとに、より効率的かつ実効的な予算執行のため、渡航地について現在慎重に再検討をしている。第三帝国期ドイツ社会学については、研究プロジェクトにとってある程度必要な文献資料を得られたので、アメリカ圏・ドイツ語圏の社会学を媒介したラザースフェルドに関する資料集のため(ケルンではなく)オーストリア、デュボイス関連資料についてアトランタとは異なる州での施設等での資料収集を構想している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の長期化のため、ドイツ、アメリカでの一次資料収集の実現がきわめて困難であり、研究の適切な遂行のため、海外渡航調査の準備をしつつ、日本国内で入手可能な資料に基づき研究を行っていたため。
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