2019 Fiscal Year Research-status Report
中国帰国者の生成的な境界文化に関する国際社会学・民族誌学的研究
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19K02131
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
南 誠 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (70614121)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中国帰国者 / 境界文化 / 多文化共生 / 社会的排除 / 社会的包摂 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中国帰国者の生成的な境界文化の国際社会学・民族誌学的な研究分析を通じて、中国帰国者をめぐる日中両国の包摂と排除のメカニズムの比較検討を行いつつ、重層的な境界による社会的拘束性と、拘束を受けつつ生活世界を構築していく生成的な境界文化の民族誌を描くことにある.具体的には申請者のこれまでの研究成果をもとに、マルチサイテッド・エスノグラフィー手法(multi-sited ethnography)を用いて、一次史料調査の便利さや、満洲移民送出の歴史と中国帰国者の居住人数を考慮して選定した日中両国の複数の地域で資料調査を行うほか、当事者と他の住民、および、関係者への聴き取り調査を実施するとともに、「境界文化」の理論的妥当性の検証を行う。 初年度にあたる2019年度は、文献資料調査と多文化共生関連の政策整理・理論的検討を行う(通年)と同時に、国内調査予定地と中国調査予定地での予備調査を実施する計画を立案していた。中国での調査は2019年のうちにほぼ予定通りに実施できたが、日本国内での調査は新型コロナウィルスの影響で、予定通りに実施することができなかった。次年度以降は調査予定地と調査内容の見直しをして、対処していく予定である。調査活動のほかには、研究成果の発表に向けて、聞き取りデータの整理や、日中両国の中国帰国者関連の政策と記事の収集とデータベース化作業にも取り組んだ。研究成果の公表としては、国内外の研究集会で研究報告を行ったほか、中国帰国者コミュニティの変遷に関する論考をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響により、2020年に入ってからの調査活動と研究活動が計画通りにほとんど実施できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響が今後も長期にわたって続く可能性があるため、今後の研究の推進方策として、移動を必要としない調査予定地への変更を前向きに検討していく。調査予定地としては、おもに長崎県を考えているが、新型コロナウィルスの収束状況を見て九州全域に広める。現在はすでに長崎県在住の中国帰国者団体と連絡を取り合い、活動の参与観察を始めている。今後は調査内容についても再検討し、本格的な調査活動に向けて準備していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、新型コロナウィルスの影響により調査計画が実施できなかったことにある。なお次年度には学術集会の開催を計画しているため、その運営経費に充てるなどして、計画的に使用していく予定である。
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