2021 Fiscal Year Research-status Report
「交替居住する孫」から見た世代間支援:現代社会における祖父母・孫関係に関する研究
Project/Area Number |
19K02132
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Research Institution | Nayoro City University |
Principal Investigator |
小野寺 理佳 名寄市立大学, 保健福祉学部, 教授 (80185660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶井 祥子 札幌大谷大学, 社会学部, 教授 (90369249)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 世代間関係 / 祖父母・孫関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、離婚や再婚の増加とそれに伴う世代間関係の多様化のなかで、「交替居住(親の離婚後、未成年子が定期的に父あるいは母のもとで一定期間暮らすこと)を経験した孫世代」に着目し、彼らが世代間支援をめぐる祖父母・孫関係をいかに主体的・選好的に築こうとしてきたのかを離婚後の親権のあり方(共同親権・単独親権)と関わらせながら明らかにすることを目指すものである。2021年度は『スウェーデンにおける「交替居住する孫世代」が築く世代間支援関係に関する研究』の1年目としてスウェーデン調査(エステルスンド市とストックホルム市)を計画した。このスウェーデン調査は当初2020年度と2021年度の2か年計画であったが、新型コロナ感染拡大により2020年度調査が不可能となったことから1年延期され、2021年度調査はスウェーデン調査の1年目として実施予定であった。調査の内容は、主には、親の離婚を経験した若い世代を対象とするインタビューであり、交替居住する孫世代が祖父母世代との関係を主体的・選好的に築いている実態を、交替居住の条件など多様な視角からとらえることを目指した。そのために、現地の研究協力者との連絡調整を重ね、インタビューの協力者確保などの事前準備を行なってきた。しかしながら、新型コロナ感染拡大のためスウェーデンへの渡航を断念せざるをえないこととなり、さらに現地の研究協力者の生活事情もあり、海外調査が不可能となった。2019年度より行ってきた国内調査(インタビュー)の継続実施も困難な状況であった。そこで、2021年度は過去のスウェーデン調査のデータの整理と再分析を進め、祖父母世代の視点からみた交替居住について論文にまとめるとともに、次年度以降の調査に向けて文献や資料の収集・検討やインタビューでの質問リストの加筆修正を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「未成年子を養育する親の離婚や再婚」という状況における家族関係や世代間関係のありようは離婚後の親権のあり方(共同親権・単独親権)に大きく影響を受けることから、共同親権・共同監護がすでに導入され、交替居住がひろまりつつあるとされるスウェーデンにおける調査を本研究計画の主軸として計画した。しかしながら、2021年度は、2020年度に引き続き新型コロナ感染拡大状況においてスウェーデンへの渡航を断念せざるをえず、予定していたスウェーデン調査が不可能となった。現地の新型コロナ感染状況や現地の研究協力者の生活事情(協力者が福祉行政系の職にありコロナ対応で多忙であったことなど)もあり、代替の調査方法を模索したがそれも実現することがかなわなかった。また、国内調査(インタビュー)を実施することも困難であったため、2021年度は海外、国内ともに調査データを得ることができなかった。その結果、過去のスウェーデン調査のデータのまとめや文献検討、次年度以降の調査計画の見直しなど今後の調査研究の準備をするにとどまらざるをえなかった。具体的には、祖父母世代の視点からみた交替居住について論文にまとめたうえで、調査の際に交替居住する孫世代がおかれている立場をより正確に理解できるように、離婚後の親権のあり方や「子どもの最善の利益」をめぐるスウェーデンや欧米、日本における議論の特徴やその流れを整理する作業を行った。調査の視角やデータ分析のポイントを精緻化できたことから、次年度に調査の実施が可能になれば、これらの蓄積を活かした調査を行ない、研究の遅れを取り戻したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2020年度および2021年度に予定されていたスウェーデンでの調査をエステルスンド市とストックホルム市において計画し、中断している国内調査も再開することを予定している。当初の2か年計画に盛り込まれていた調査内容を実施できるよう、十分な渡航期間の確保に向けて調整する。スウェーデン調査として、当初はエステルスンド市のみを調査対象地としていたが、大都市圏ストックホルム市での調査も加えることとしている。調査の中心は、親の離別を経験した若い世代(祖父母からみた孫)を対象とするインタビューであり、交替居住の有無、交替居住の取決め内容と実際、祖父母からの支援などを問い、親の離別が子ども自身のネットワークや家族関係意識にどのような影響を与えたのかを明らかし、交替居住する孫世代が祖父母世代との関係を主体的・選好的に築いている実態をとらえることを目指す。この他、親の離別を経験した子ども対象のサポートプログラムの利用者である保護者へのインタビュー、コミューンの子ども福祉・家族福祉担当職員へのインタビューも計画している。しかし、新型コロナ感染が収束に向かっているとはいえない状況において、国境を越えた移動の制限があったり、研究協力者や調査対象者の安心・安全を保障できる環境での調査実施の困難性が確実に予想されたりする場合には、2022年度もスウェーデン渡航と国内調査の中止を検討する。その場合、国内調査については、状況が改善されれば一部だけでも実施する。スウェーデン調査については、現地に渡航せずとも新型コロナ感染状況下で可能な調査として実施すべく進める。現地の研究協力者からは、仮に渡航できない場合、質問紙調査などに切り替えて安心・安全なかたちで実施することへの協力が得られる運びとなっており、詳細について検討・調整を始めているため、対応可能である。
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Causes of Carryover |
2021年度は、2020年度に引き続き、予定していたスウェーデン調査の実施が新型コロナウィルス感染拡大状況において不可能となり、国内調査を実施することも困難であったため、すべての調査について2年連続で実施を断念せざるをえなかった。また、研究代表者と分担者の勤務地間の移動の自粛が求められていた時期もあったことから、分担者との打ち合わせを対面で行うこともかなわなかった。その結果、海外調査、国内調査、打ち合わせ会議のための旅費、海外調査に関わる通訳や翻訳など現地協力者への謝金など、調査実施のために準備していた費用を使用することができなかった。2022年度は、2020年度および2021年度に予定されていた海外調査の実施を計画しており、中断している国内調査も再開することを予定している。当初の2か年計画に盛り込まれていた調査内容を実施できるよう、旅費を有効に使用して十分な渡航期間の確保に向けて調整したい。仮に2022年度も新型コロナの状況によって渡航がかなわない事態となった場合は、現地協力者の協力を得て、渡航せずとも可能なかたちに切り替えて可能な範囲での調査を実施することにしており、協力者の増員、協力者への依頼内容の増加、現地での必要経費の増加などに対して渡航旅費分を充てたいと考えている。
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Research Products
(1 results)