2019 Fiscal Year Research-status Report
原子力施設立地点における住民の生活保全とコミュニティ形成に関する実証的研究
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19K02133
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
山室 敦嗣 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 教授 (90352286)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原子力施設立地点 / 生活保全 / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、原子力開発が惹起する地域生活を揺るがす諸問題に関して、原子力施設の立地点に暮らす住民の弾力的で持続的な対処を支えるコミュニティの実証的解明を試みる。ここでいう諸問題とは、原子力発電所の存廃が引き起こす地域経済の問題、核廃棄物処理の問題、稼働する原子力施設の安全確保、原子力事故で被害をうけた場合の救済などである。本研究は、原子力開発が惹起する諸問題についての社会学的な解決論として、公共圏での討議と社会運動団体の対案提示にもとづく政策転換論的な従来の解決論に加えて、コミュニティ論的な解決論の地平を新たに切り拓くことを目的としている。 そこで初年度は以下の2点を中心に研究を進めた。ひとつは、本研究の理論的視座を検討するために、先行研究の理論的整理と考察をおこなった。福島第一原発事故にともなう「被災コミュニティ」に関する社会学的研究の整理にとどまらず、「小さなコミュニティ」のもつ生活保全力や環境保全力の仕組みを理論化した生活環境主義が有する可能性についても考察をおこない、本研究を進めるさいの理論的な視座を検討した。 もうひとつは、原子力施設立地点の茨城県東海村でフィールドワークをおこなった。東海村は、核燃料加工工場のJCOで1999年に発生した臨界事故によって、日本で初めて住民が避難するという原子力災害にみまわれた。そのJCOで、2014年から実施されている低レベル放射性廃棄物の焼却をめぐって、JCOに近接する4つの地域自治会が共同し、JCOの敷地内で空間線量の測定を行政と定期的に行っている。こうした「空間線量調査会」の設立に尽力した住民有志と自治会の人々などに聞き取り調査を行うとともに、線量調査会の設立にかかわる資料収集に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年3月に予定していた茨城県東海村をはじめとする日本各地の原子力施設立地点での聞き取り調査や資料収集を、新型コロナウイルスの影響によって実施することができず、研究の現在までの進捗状況はやや遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の計画どおりに行なう予定であるが、新型コロナウイルスの感染状況をふまえ、茨城県東海村などの原子力施設立地点での住民に対する聞き取り調査については、実施時期などを含めて柔軟に対応するかたちで研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響によって、2020年3月に予定していた茨城県東海村をはじめとする日本各地の原子力施設立地点でのフィールドワークを実施することができなかったためである。 次年度は新型コロナウイルスの感染状況をふまえ、原子力施設立地点での現地調査で助成金を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)