2019 Fiscal Year Research-status Report
The Social History of Modern Coal Miners in Kyushu and Hokkaido: Intersectionality Structure of Ethnicity, Gender and Class
Project/Area Number |
19K02134
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
徐 阿貴 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (90447566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 和美 名古屋学院大学, 外国語学部, 講師 (90826562)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 炭鉱 / 囚人 / 強制労働 / 朝鮮人 / 植民地主義 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、先行研究の整理と研究視角の明確化、史料収集と現地調査を行った。まず国際シンポジウム「『石炭の文化』とその多様性」(筑豊と東京で開催)に参加し、炭や炭鉱を「文化」と考え、イギリス、アメリカ、日本の比較研究から、グローバルな炭鉱研究の動向を把握した。ウェールズから来ていたSteve Thompson (Aberystwyth University)氏のDisabilities and the Culture of Coal研究は、炭鉱のディスアビリティ(障害)の歴史に焦点を当てた内容で、炭鉱研究、またディスアビリティー研究分野においても非常に新しい画期的なものだった。 調査に関しては、筑豊炭鉱における朝鮮人および女性坑夫関係者への聞き取り、炭鉱跡や市民活動フィールドワーク、福岡県立図書館や林えいだい記念ありらん文庫資料室、在日韓人歴史資料館図書室、国立国会図書館で史料収集を行った。また比較研究としてイングランド国立炭鉱博物館を訪問し、女性坑夫およびカリブ地域からの移民労働者に関する史料収集を行った。帝国下でのエスニシティとジェンダー構造が炭鉱労働編成とどう関わるか、理解が進んだ(代表者)。北海道については、国立国会図書館、矯正図書館、道立図書館、北海道大学図書館、大牟田市立図書館にて、囚人労働、特に囚人外役と炭鉱労働の交差について、以下3点の視点より資料収集を行った。囚人労働の歴史と実態の把握、日本資本主義発展の中での囚人労働の役割、1903年の北海道での全面廃止、もしくは大牟田の場合1930年に向けて誰がどのような方法で囚人労働環境改善や廃止に貢献したのかという点である(分担者)。代表者と分担者で研究会議(東京)を2度開き、個人で行った資料調査の結果報告や研究計画の確認調整を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東京、札幌、福岡で史料および現地調査を行う中で、朝鮮人と女性坑夫、囚人労働と炭鉱労働が交差する部分を理解するための基礎的な史料や聞き取りデータを収集することができた。調査のプロセスを通じて、共同研究の問いをさらに絞ることができた。囚人労働に関しては、どのように囚人労働環境改善が行われ、囚人労働廃止に向けどのような動きがあったのかという点に特に焦点を当てたい。今後研究を進め、その成果を学会発表・論文執筆を通じて発信していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
各自の調査研究を進めていくとともに、研究会議を開催して、研究テーマと方法論の共有を図り、課題を具体的に実現していく。筑豊については、朝鮮人および女性坑夫の労働および生活について関係者からの聞き取りを継続し、史料からはわからない当時の状況を生きた形で浮かび上がらせていきたい。囚人労働に関しては、環境改善、廃囚人労働の動きについて、炭坑関係者や囚人自身、監獄医、教誨師などの監獄の中にいる人々がどのように囚人労働を考え、発言・行動してきたのかを主な焦点として研究を進める。 今年度は調査結果を学会発表を通じて発信し、他の研究者との議論を深めていく予定である。国内学会としては、 2020年12月のジェンダー史学会第17回年次大会で「感染症と社会運動(仮)」をテーマにパネル発表する。国際学会として、2021年3月開催のAssociation for Asian Studies (AAS)の年次大会にて、「Confined spaces in Japanese Empire (仮)」(帝国日本における制限された空間)をテーマにパネル発表する予定である。さらに、それらの学会発表を通じて、論文執筆に着手する。
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Causes of Carryover |
2020年度に代表者と分担者と共同で米国で開かれる国際学会(Association for Asian Studies年次大会, Seatle)でのパネル発表を企画している。2年目の請求金額では旅費をまかなえないため、1年目研究費の一部を繰り越すこととした。
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Remarks |
徐阿貴「企業ファースト化する日本: 虚妄の『働き方改 革』を問う「筑豊」と「働き方改革」をつなぐ企業ファーストの闇」(竹信三恵子氏との共同セミナー)、アジア女性資料センター主催、2019年11月1日(東京ウィメンズプラザ)。
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