2020 Fiscal Year Research-status Report
若年期の不安定就労の累積的影響――系列分析を用いたコーホート間比較
Project/Area Number |
19K02138
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
香川 めい 大東文化大学, 社会学部, 講師 (00514176)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 系列分析 / 初期キャリア / ライフコース / 学歴過剰 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、就職氷河期世代前後で若年期のキャリア形成にいかなる違いが生じたのかを明らかにすることにある。就職氷河期世代は、景気低迷期に職業生活を開始せざるを得なかった世代であるとともに、4年制大学への進学率の上昇を経験した世代でもある。この特異な世代がいかなるキャリア形成に直面したのかをみるため、(1)初期キャリアの類型化、(2)初期キャリア類型と30代前半の状況の関連の検討、(3) (2)で検討した関連(初期キャリア類型と30代前半の状況)のコーホート内比較とコーホート間比較の3つの課題を検討する。分析には、月単位の職業経歴の情報が得られるデータを使用する。初期キャリアの類型化(課題(1))にあたっては、離学後10年間の職歴情報に対して、系列分析を行う。ここで得られた初期キャリア類型をもとに、課題(2)、課題(3)を行うことで、就職氷河期世代とその前後のコーホートの初期キャリア形成過程とその帰結の関連が判明する。これらを通じて、社会状況の変化が特定のコーホートのライフコース形成に与えた影響を検討し、負の影響が累積的に持続するプロセスの解明を目指す。 2020年度は、初期キャリアの類型化を行うのと並行して、初期キャリアの形成状況を確認するため、系列分析の分野で発展してきている系列の特徴を示す種々の指標を用いたコーホート間比較を行った。暫定的な結果ではあるが、1990年代以降に高校を卒業したコーホートでは、男性でも初期キャリアが不安定化していることが確認できた。大卒者に限定したところ、大学ランク間の差異には、コーホートによる違いは認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19の流行拡大による度重なる緊急事態宣言の発令され、年度初めの移動が制限された。また、授業方法のオンライン化に伴う業務量の急増や授業期間が変更されたことに伴い、夏季休暇期間が1か月近く縮減され、当初予定していた時期に研究時間を確保することがままならなくなった。年度の後半に挽回を試みたが、及ばなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に進めるはずだったデータを整備し、分析に着手する。さらに、先行研究の渉猟の範囲を広げ、本研究の位置づけを明確化する。本研究は、学歴拡大にともなう学歴過剰や学歴インフレにともなうものと位置づけてきたが、経済動向をふまえたうえでの、相対的な優位性の逓減を明らかにするための分析枠組みや理論枠組みを再考する。その上で、ここまでの成果を発表し、論文として発表することを目指す。
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Causes of Carryover |
COVID-19の流行拡大で、2020年度に参加を予定していたヨーロッパでの国際学会がキャンセルされたので、計上していた参加費と旅費が不要になった。国内学会も開催されたものはオンライン開催に変更されたため、旅費が不要となり、参加費も予定よりは安価になった。 今年度は、昨年同様に円滑に分析を進めるための物品費として用いるほか、ヨーロッパを中心に発行されている最新の研究論文や書籍等の購入費として用いる。
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