2020 Fiscal Year Research-status Report
Housing Reconstruction and Community Transformation after the Great East Japan Earthquake: A Ten-year Longitudinal Study of a Neighborhood
Project/Area Number |
19K02139
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
西野 淑美 東洋大学, 社会学部, 准教授 (30386304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石倉 義博 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60334265)
平井 太郎 弘前大学, 大学院地域社会研究科, 准教授 (70573559)
秋田 典子 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (20447345)
永井 暁子 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (10401267)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 岩手県釜石市 / 生活再建 / 住宅再建 / 居住地選択 / 土地区画整理事業 / 町内会 / 縦断調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、災害時に地理的に同一条件にあった住民が、各世帯の社会的な要因と復興事業の状況により、どのように異なる生活再建行動をとるのかを明らかにすることである。そのため、東日本大震災時の岩手県釜石市A町内会会員のうち40数世帯に2012年から原則毎年繰り返して聞き取り調査(縦断調査)を実施し、2019年までに8回の対面調査を重ねてきた。どのような条件の世帯がどのような時期にどのような形態の住宅再建を行ったのか、またどのような判断のもとでそのような選択を行ったのか、選択が変わった場合は何があったのか。このような問いに、回顧法の調査ではなく各時点での証言をもとに答えうるデータを蓄積してきている。 しかし、2020年度はコロナ禍により、予定していた第9回目の聞き取り調査の実施を断念せざるを得なかった。電話やメールで連絡を取るなか、現地では東京方面からの来訪を避けてほしいとの感情が強いことが見受けられたためである。 2018年度末に区画整理に一区切りがついたとはいえ、新生した町に各世帯がどのように定着し、コミュニティがどのように変化していくか、引き続き継続的な観察が必要である。本来は2020年夏の聞き取りで、区画整理の完了に伴ってA町でも最も遅いタイミングで自宅を再建した各世帯の動向、A町を離れて自宅再建をしたり復興公営住宅に入居したりした人々の生活状況やコミュニティ環境、まちなか再生などの各種事業の進捗が町にもたらした効果、釜石市で開催された2019年秋のラグビーワールドカップをめぐる経験などを聞き取る予定だった。2021年度には、可能ならば現地を訪問して、対面でこれらの内容を聞き取りたいと考えているが、コロナ禍の状況が厳しい場合は、対象世帯が偏ることの問題を認識しつつも、テレビ会議等に対応できる一部の世帯だけでも、オンラインでの聞き取りへの協力を仰ぎたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、長期にわたる協力を釜石市A町内会の震災時会員から得ている。当該の全195世帯(借家を除く数字)のうち、2015年までに一度でも調査協力を得た世帯の数は48世帯であり、さらに2016年~2019年に19世帯追加して(ただし単発調査も含む)、計67世帯となった。そのうち40数世帯に縦断調査を継続している。本科学研究費の1年目にあたる2019年夏には、第8回目の聞き取りを震災から8年半の時点で行った。よって、長期的に見ると研究は順調に進んできているが、前述のように2020年度の聞き取りは断念せざるを得なかったため、この年のデータを蓄積できなかった点では進捗が遅れたと言える。 2020年度の調査を断念した背景には、本研究にとって対象地域と長期的に良好な関係を維持することが特に重要であり、現地訪問の強行は自粛することが妥当との判断があった。また、本研究の特徴の一つは、同じ地区に混在する様々な世代・状況の世帯にまんべんなく聞き取りを行うことにある。コロナ禍にあっても、テレビ会議方式などのオンライン機器を介してインタビューする方法はあるが、そのような方法に適応できる世帯は限られてくる。その場合、調査対象者に偏りが出る恐れがあるため、2020年度はオンラインによる調査も見送った。しかし、現地訪問が難しい状況が2021年度も続く場合は、可能な世帯だけでもオンラインでのインタビューを行うことを検討したい。 また、釜石市役所の各担当者への聞き取り調査もこれまでに重ねてきた。2020年度は実施を見送ったが、2021年度は訪問またはオンラインによる聞き取りを進めたい。 なお、2020年6月刊行の東大社研他編『地域の危機・釜石の対応』(東京大学出版会)の一つの章(西野淑美・石倉義博「住宅再建までの判断と道程 : 同じ町の人々の異なる8年間」)として、本研究の成果が公開された。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の予定はコロナ禍の状況により変化しうるが、現段階では以下の予定を立てている。まず、2018年と2019年の調査を合わせた報告書を8月に刊行し、調査対象世帯および関係者に送付する。また、これまで聞き取りを行った世帯に、第9回目にあたる調査を8月から2022年2月の間に行う。2019年夏からの生活の変化、住宅の状況、課題・心情などについて、1世帯につき1-2時間の聞き取り調査を実施する。状況が許せば訪問して対面調査を行うが、現地訪問が難しい場合は、オンライン調査に対応可能な世帯のみ、テレビ会議方式などで聞き取りを行う予定である。ただし、早期に住宅再建済みの世帯には2-3年に1度のペースで調査を継続することとしているため、一部の世帯は調査を行わない。なお、2021年度調査の報告書は2022年度に刊行する。また、釜石市役所への聞き取りも、訪問またはオンラインで実施予定である。 なお、本研究の最終年度は調査の取りまとめに充てる予定であり、本来ならば2021年度が最終年度である。しかし、コロナ禍により聞き取り調査がずれ込んだために2021年度は実査が続き、取りまとめの作業には充てられない見込みである。よって、本研究は1年間の延長申請を検討している。 また、聞き取り対象世帯以外でA町内会が居所を把握している約100世帯に対して、震災5年後に実施した質問紙調査に続き、震災10年後の2021年3月に質問紙調査を実施予定だった。しかし、聞き取り調査の実施がずれ込んだたため、質問紙調査は2021年度末または2022年度への延期を予定している。 本研究の成果は引き続き学会報告等で公表する。また、本研究を1冊の図書として出版することを目指しており、メンバーで研究会を重ねて草稿執筆を進めていく。
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Causes of Carryover |
前述のように今年度は釜石市に訪問して調査することを断念したため、旅費の支出が大幅に減り、次年度への繰り越しが多く生じた。繰り越し分は2021年度中に実施する調査に活用していく。ただし、前述のように本研究は2022年度への延長申請を検討しており、申請が受理されたならば、2021・2022年度の2年間にわたる形で効果的に活用する。
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