2020 Fiscal Year Research-status Report
Sociology of short-term higher education in Japanese society
Project/Area Number |
19K02140
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
多喜 弘文 法政大学, 社会学部, 准教授 (20634033)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 短期高等教育学歴 / 専門学校 / 短期大学 / 職業資格 / ジェンダー / 社会階層 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、申請者が2017年度に実施した「専門学校通学経験者に対する全国調査」との比較を前提とする「短期大学通学経験者に対する全国調査」を新たに実施した。この調査は、先行研究の知見に基づき、中等後教育の転換点とされる1990年前後より前に高校を卒業した1957-71年生まれと、それ以後に卒業した1972-86年生まれの比較が可能な形で設計したウェブモニター調査である。コロナ禍の影響のため、実施時期を慎重に見極めつつ、現在の職業に関わる影響が生じているかどうかを確認するための質問項目を新たに盛り込んだ。2021年2月にウェブ調査を実施後、別の調査での知見を活かしてデータクリーニング作業を進めるとともに、就業構造基本調査などのデータを用いて、得られた回答分布の偏りを確認するための基礎的検討をおこなった。 また、本科研で得られた知見の一部を新たに学会で報告し、過去に学会報告をおこなって専門家のフィードバックを得た研究については、2021年7月に出版予定の本の1章として執筆した(印刷中)。前者については、高校生に対する追跡調査を用いて、当初の希望と実際の進路の関連およびそのジェンダー差を明らかにした。後者については、SSM調査を用いて短期高等教育進学者における地位達成の男女差とその変容を解明している。いずれも上述の新規調査で検討予定のテーマに関連する研究であり、今後上の調査を用いた分析を進めるうえでの基礎的な情報の確認作業として位置づけられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はコロナ禍によっていくつもの学会が中止や大幅な変更を余儀なくされ、調査環境にも深刻な影響が生じることが懸念されたが、おおむね問題なく研究を進めることができた。具体的には、上述の通り、「専門学校通学経験者に対する全国調査」との比較を前提とする「短期大学通学経験者に対する全国調査」のウェブ調査を無事実施することができている。また、SSM調査を用いた検討についても、当初の予定通り、本の1章として出版される予定となっている。 さらに、本研究課題とのかかわりで重要となる職業資格について、東京大学社会科学研究所の実施する「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査(JLPS: Japanese Life Course Panel Surveys)」を用いて、職業資格に関する基礎的検討をおこない、その結果を上述の新規実施調査のコーディング作業にフィードバックすることができた。 以上の状況より、今のところ本研究課題は短期高等教育学歴とその変容に関する社会学的研究を最終年度である2021年度に成果としてまとめるという目標にむけ、おおむね順調に進捗していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は本科研の最終年度であるため、2020年度に実施した新規調査データの分析を通じて、中等後教育の転換点とされる1990年前後より前に高校を卒業した1957-71年生まれと、それ以後に卒業した1972-86年生まれの短期高等教育学歴保持者の実態とその変化およびジェンダー差を総合的に解明することを目指す。具体的には、本科研で得られた成果を引き続き学会報告および論文投稿によって公表していくとともに、それらをより大きな観点からまとめるべく、科研報告書の刊行を行う予定である。報告書には、2017年度の専門学校調査と2020年度の短期大学調査という2つの短期高等教育調査の概要および基礎分析結果を掲載するとともに、これまでの研究成果をもとに短期高等教育学歴について、特に研究蓄積の薄い1990年代後半以降の変化とジェンダー差に焦点を当てて、本科研で明らかになったことをまとめる。その報告書をもとに、科研の成果を書籍として広く公表すべく引き続き課題を進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により計画を見直したものの、感染症再拡大に伴い出張を取りやめたため次年度への繰り越しが生じた。論文投稿にあたっての英文校閲費用などに充てることを予定している。
|