2022 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャルワークの社会学的再検討による教育・実践理論の構築―シカゴ学派を補助線に
Project/Area Number |
19K02148
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
西川 知亨 関西大学, 人間健康学部, 教授 (50582920)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ソーシャルワーク / シカゴ学派 / 総合的社会認識 / 社会学的再検討 / 人間生態学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ソーシャルワークの社会学的再検討による教育・実践理論の構築をめざす本研究において、当該年度は、前年度における理論的・方法論的研究(単著『初期シカゴ学派の人間生態学の展開――総合的社会認識の社会学』(関西大学出版部、2021年)において結実した)から歩を進め、よりよいソーシャルワーク実践および教育の実現に向けて、福祉コミュニティ創生へのシカゴ学派の生態学観の活用可能性を追究した。次世代の福祉コミュニティづくりの方法としては、コミュニティ・ソーシャルワーク(CSW)の方法が知られているが、そこでは利用者・行為者の「エコマップの『向こう側』と『こちら側』」を看過しがちであることに関する問題系を整理した。そのうえで、時代状況に即したシカゴ学派の各世代(第1世代~第4世代)の理論を概観することで、人口の社会構造・変動・生態学的過程と、相互作用秩序の両者をとらえる視点を抽出し、次世代のコミュニティづくりに資する理論的視点を提示する作業を行った。この研究の一環として、ソーシャルワーカーも活用しうるように福祉事例を盛り込んだ社会調査の共編著(三井さよ・三谷はるよ・西川知亨・工藤保則編,『はじめての社会調査』(世界思想社、2023年))を刊行した。この作業のなかで、社会学史のみならず社会調査史のなかでの社会福祉調査、および質的データと量的データを組み合わせる混合研究法の意義について浮かび上がらせた。シカゴ学派の各世代の理論、とくにエコロジーからエソロジーへと連なる生態学観は、社会福祉の領域によって想定されている相対的に狭いコミュニティ観を超えて、「エコマップの『向こう側』と『こちら側』」という社会の諸領域を照射できる理論的視点となりうるものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該の研究課題にかかる成果をいくつか公表できたものの、ソーシャルワーク実践および教育の実現に向けた、世代論や人口論の視点を組み込んだ福祉コミュニティ創生へのシカゴ学派の生態学観の活用可能性に関する成果については、次年度以降に公表することになったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
ソーシャルワーク実践および教育の実現に向けた、世代論や人口論の視点を組み込んだ福祉コミュニティ創生へのシカゴ学派の生態学観の活用可能性に関する成果の公表に向けて、継続的に研究作業を進めていく。
|
Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由としては、近年の不安定化した社会状況のなかで、予定していた出張計画に変更が生じたことがあげられる。また、ソーシャルワーク教育研究、および社会調査研究にかかる費用の一部として、所属機関等にかかる別資金を利用することができたことがあげられる。 使用計画としては、人口論や世代論など内外の社会学および社会福祉学に関する文献、およびソーシャルワーク教育に関する諸媒体(映像資料も含む)を収集・購入する経費として用いる。
|
-
-
[Book] はじめての社会調査2023
Author(s)
三井 さよ、三谷 はるよ、西川 知亨、工藤 保則
Total Pages
232
Publisher
世界思想社
ISBN
9784790717775